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あなたの傍で〜言の葉〜
【純愛 恋愛小説】

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あなたの傍で〜言の葉〜-1

カーテンの隙間から差す光が眩しくて、僕は目を覚ました。
ベッドから起き上がり、煙草に火を点けながらコーヒーを煎れる。
出来上がったコーヒーを眠気覚ましに飲みながら、カーテンを開けた。
どうやら昨日の嵐は去ったようで、窓の向こうは快晴となっていた。
久々の天気なので、僕は気晴らしに朝の散歩へと出掛けることにした。
人の手の加えられていない小道を抜けると、無限に広がる青い空と、透き通るような青い海が僕の目の前に現れた。
この島に移り住んでもう何年と経つが、この景色だけは飽きることが無い。
僕は砂浜に腰を下ろし、しばらくの間この景色を眺めていた…。

すると、遠くの浜辺の波打ち際で、何かがチラッと光っているのが見え、好奇心に惹かれた僕はその浜辺へと向かった。
それは太陽の光を反射していただけの小さなハンドミラーだった。
それを拾い、自分のポケットにしまった僕は、顔を上げた。
その時、また別の何かが奥の入り江近くに漂っているのを見付けた。
用でも無ければ普段は滅多に近寄らない入り江は、こちらの浜辺とは樹木と大きな一枚岩で隔てられているため、遠くからでは様子が分からなかった。
入り江へ向かっている途中砂浜に人影らしきモノが倒れているのを見付け、僕は慌てて駆け寄って行った。
倒れていたのはまだ10代半ば頃だろうという少女だった。
僕は急いで少女を仰向けにし、声を掛けてみたが、返事が無かった。
一瞬、嫌な考えが頭を過るが、微かに息をしているのが確認でき、安堵の息を吐いた。
段々と冷静さを取り戻した僕は、状況を把握することにした。
辺りには船の残骸らしき物が漂っていたり、浜辺に打ち上げられている。
昨日の嵐で遭難したのだろうか。
それならばと思い、辺りを見回すが、他に倒れている人は見当たらなかった。
近海には、この島以外の島は無い。
他の生存者は絶望的だろう…。
この娘も独りっきりになってしまったのか…。
とにかく、嵐の中を漂流したのならば大分衰弱しているはずだ。
それに余程酷い目に遭ったのだろう、少女の白い肌には所々傷やアザがある。
靴などは履いておらず、全体に塩水を含んだ服もボロボロになっていた。
僕は少女を傷の手当ても兼ねて、自分の小屋で休ませることにし、抱き上げた。少女は氷のように冷たく、顔も真っ白だった。
そして異様に軽かった。
水分を含んでいる服を着ているにもかかわらず、軽すぎる。
手足は枯れ木のように細く顔は少々やつれていた。
誰が見ても心配になるほどだった。
小道を抜け、小屋へ戻った僕は、ずぶ濡れとなった服を着替えさせた少女を、ベッドへと寝かせた。
傷の手当てが済み一段落したので、僕は煙草に火を点け一服した。
煙草を吸い終わり、少女の顔色を診る。
本来の赤みを取り戻しつつあった。
そして額に手を当て、体温も正常になりつつあるのを確認する。
その手を離した瞬間、突然少女の目蓋が開き、と同時に悲鳴が小屋の中に響き渡った。
驚いた僕は床に尻餅をついた。
少女のほうは、ベッドの上で両膝を抱え込みブルブルと震えていた。
無理もない、嵐で気を失い気が付いたら全く知らない顔が目の前に在ったのだから。
僕はなんと声を掛けたらいいか。
いや、その前にどう動けばいいのかと困惑していた。すると少女が首を挙げ、辺りをキョロキョロと見始めた。
どうやら自分の置かれている状況を必死に理解しようとしているようだ。
そして、少女は僕の方を向き、申し訳なさそうな表情をした。
僕に害は無いこと。
介抱をしてもらったことを理解したのだろう。
頭の良い娘だ。


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