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きみおもふ。
【純愛 恋愛小説】

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きみおもふ。-19

「悪いな、お前も忙しいのに。でも最近頑張ってるみたいじゃないか。この調子で突っ走れよ」
「はい」
放課後、友夏は職員室にいた。担任教師に呼び出されていたのである。
「それで本題に入るがな、お前と日下はイトコだろう?」
困ったように俯き、小さくはいと答える友夏。逸に否定されたことが少なからず影響しているのだろう。
「アイツの志望校知っているか?」
「はい、国瀧でしょう?A判定だって…」
ああ、と担任は頭を振った。
「あの馬鹿、朝森にも言ってなかったのか…」
え、と怪訝そうに担任を見る友夏。担任は続ける。
「確かに国瀧なら確実に受かるだろう。だがな、日下は志望校を変えたんだよ、帝光学院にな」
「て、帝光!?」
友夏は思わず叫んだ。帝光学院と言えば名門中の名門。偏差値もありえないくらい高い。
頷いて担任は言う。
「いくら日下でもな、帝光は無理があると思う。何しろうちの高校で教えるレベルを遥か越えた試験問題がでるんだからな。だがな」
はぁ、と一つ溜め息をつく担任。
「アイツ、言っても聞かないんだよ。頑として。なんでそんなにそこがいいのかと聞いても答えないしな。だからな朝森、お前からも言ってやってくれないか。無理するなと、な?」
ふと逸の様子を思い出す友夏。あれは全て逸が無理をしていたせいだったのだ。
あのまま続けさせればいずれ体を壊してしまうのは目に見えている。
「分かりました!」
真っすぐ担任を見つめ、友夏は言った。
「私、これから家に行ってみます!」
頼んだぞという担任の声を背に、少女は小走りで職員室を後にした。


逸の家に着く頃にはとっぷり日が暮れていた。闇夜に風が舞い踊っている。その空気は肌を刺すように冷たい。
ほんわか灯る玄関先の明かりの下、友夏は震える手でチャイムを押した。
暫く間があってインターホンがつながる。
〈はい、どちら様でしょう?〉
逸母の声だ。友夏は緊張しながら言葉を話す。
「叔母さんこんばんは。あの、朝森です。朝森友夏です」
〈あらぁ、友夏ちゃん?待っててね、今開けるから〉
インターホンが切れた直後、家の中が騒がしくなり扉が開いた。玄関ホールの明かりが優しく友夏を包む。
「まぁ友夏ちゃん、ようこそ。寒かったでしょう?入って、今温かいもの用意するから」
逸母は満面の笑みで友夏を迎え入れた。
「あ、ありがとうございます。あの、でも私逸くんに会いに来たんです。逸くん、元気ですか?ちゃんと寝てます?」
今まで心に蓄めていた質問が一気に口から溢れ出る。それを聞いて、逸母はふと悲しそうな顔になり言った。
「それがね、あの子家に帰るとすぐに部屋に籠もってしまうのよ。ご飯だってろくに食べていないの。どうして国瀧から志望校変えたのかしらね」
どうやら志望校変更の理由は母親さえも知らないらしい。
「あんなに無理することないのに…」
そういって逸母は二階の方へ視線をやった。普段どうこうしていても、やはり親は子供のことが心配なのだと友夏は思った。
「あの、逸くんに会ってきてもいいですか」
なるべく優しい声で逸母に問う。逸母は悲しそうな笑顔で小さく頷いた。


階段を上がり、逸の部屋の前に立つ友夏。暗がりの中で一つ深呼吸して腹を据えた。


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