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きみおもふ。
【純愛 恋愛小説】

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きみおもふ。-17

「お?優等生が珍しいな。どうした、勉強のし過ぎで寝坊か?」
「まーそんなとこってことにしといて下さい」
そう笑う男子生徒を見止めて、友夏にやっと安堵の表情が戻った。
「じゃあギリギリでセーフにしといてやるか。ほら早く席着け」
「あ、やった」
逸が席に着くのを待ってから、担任が話を始める。
「まーず。昨日中間が終わったな?だからって一息つくんじゃないぞ。中間なんてただの通過地点だ。最終駅はセンターだからな、気を抜かないように」
聞いているうち、友夏はだんだん憂欝になってきた。現実を嫌でも知らされる。
「というわけで」
にやり、と担任が笑った。
「九月末にやった全国模試の結果を返すぞー」

「っえええ!?」

クラス中がざわめき立つ。もちろん友夏もその一人だ。言わない生徒、といったら逸くらいだろう。
友夏の名字は朝森である。悲しいかな、出席番号一番は小学生の頃から決まり切っていた。
「朝森!」
のろのろ立ち上がると教卓へ向かう。担任は突き出すように結果表を渡すと、次の生徒の名を呼んだ。
友夏は紙を二つに折り畳んで席へ戻る。窓に映る、雨粒で滲んだ自らの顔を見てから意を決したように紙を開いた。

―――CCBC

ふう、と溜め息を吐く友夏。このアルファベットは順に第一希望から第四希望までの評価を表す。
Bが合格圏内。最低はEである。
(よかった、後少しだ)
そう思った友夏の耳元で声が響いた。
「どうだった?朝森さん」
「うわっ!」
慌てて紙の上に突っ伏せる友夏。傍にいた人物も「うわっ」と声をあげる。
「何だよ急に。そんな驚くことないじゃんか」
「坂上くんだって急に声かけないでよー」
ごめんごめんと頭を掻くのは友夏の隣の席の人物。彼とは高校一年からずっと同じクラスだったので二人は仲が良い。
「俺微妙だったよ。Cなんて受かるか落ちるかの境目だからさ、中途半端だよな」
「あ、私もCだった。お互い頑張らなきゃだね!」
ぐっと拳を握る友夏。ね、と坂上も真似をする。
「そういえば朝森さんの第一志望はどこなの?」
「えっとね、桜乃大の農学部」
「ええっ、マジで!?」
目を丸くして坂上が告げた。
「俺と一緒!てことは俺等ライバル?」
友夏も目を丸くする。
「嘘、奇遇だね?でもライバルなんてやめてよ。せめて同士でしょー」
わはははと笑う二人。先生が去った教室内はこうやって話す人で溢れていたので、決して彼らの会話が目立っていた訳ではなかった。
しかし。

逸には別だった。ひたすら俯いて胸の内の荒らぶりを押さえている。
どうして自分ではなく別の奴に志望大学を先に教えてしまうのだと。
どうして自分ではなく別の奴と楽しそうに笑っているのだと――…


「あーーっ!」


大きな声が響いて誰かが逸の模試結果を取り上げた。
「おい逸、お前国瀧A判定じゃねぇかよ!」
その言葉に教室が一瞬水を打ったように静まり返る。直後一斉にどよめきと感嘆の声が溢れた。
「バカ、返せよ早瀬」
逸はむっとした顔で用紙を取り返す。
その時。
逸の耳に坂上の声が聞こえた。


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