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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 17-2

***

奏はもう、ほとんど車椅子を使うことはなかった。
まだ時間はかかるが、少しの距離なら常に歩くようにしている。

というわけで、俺達はゆっくりと病室までの道を歩いていた。
人にぶつからないように、俺が奏のすぐ前を歩いて先導する。

「春陽さん、タバコの匂いがします」
突然、奏はそんなことを言い出す。
「…そうか?」
俺は自分の上着の裾を鼻に近付けたが、匂いは感じなかった。
自分では意外と気付かないものだ。
「はい」
奏も後ろから俺の腕を掴んで鼻を近付ける。
その仕草にかなり心臓が跳ねた。
「やっぱり、奏は嫌か?」

世間的には、喫煙者というだけでその人物に近付かない人間はかなり多い。
やはり周囲への健康や環境の害悪が強いというイメージが大きいのだろう。

「嫌じゃないですよ?」
「…なんでだよ」
「春陽さんはしっかりマナーを守っていますし、それに…」

…なんとなく予想がつくが、できれば当たらないでほしい。

「お父さんも同じ匂いがしますから」
「……そ、そうか」

見事に的中。

商品をくれ。

「それにしても春陽さんって、本当にお父さんに似てきましたよね」
「え?」
「最初から雰囲気は似てるなぁって思ってましたけど、最近は言動もそっくり!今では匂いまで」
奏はうれしそうに笑う。

俺としては、お父さんはいい人だけど未だにつかみ所がないし、よく理解できない。
もちろん、これだけの付き合いだから、粗方は理解してきたつもりだが、いかんせん謎が多いんだよな。

つまり、勘弁してほしい。

ふと、自分がいつか、父親になったときのことを想像してみた。

「………そっくりだな」
「ですよね!」

認めたくないが、俺はやはりあんな父親になりたいのだろう。
破天荒だが、熱くて強い人。
理想の父親だった。

まあ、もうお父さんのことを考えるのはやめよう。
やっと病室に着いて二人でゆっくりできるのに、これ以上考えてたら俺達の邪魔をしに来そうだ。


「よう」
「あ、お父さん」
「ぎゃあああ!」
「…春陽、病院では騒ぐなと教わらなかったか?」

あんたのせいだよ!!!

ふぅ、今回も言葉を寸前で飲み込めた。


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