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【幼馴染 官能小説】

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「由紀、今暇?」

もう日が変わろうとしている時に、ブルブルと震え出した携帯を取るか取らないか散々迷った挙げ句、僕は読みかけの小説に丁寧にしおりを挟んでから閉じ、携帯を手に取った。

「んー暇だけど。」

こんな時間帯に、ましてやゆっくりしている時に外に出てこいなんて言われたら面倒くさい、なんてちらりと思った事はおくびにも出さずに、僕はゆったりと答える。

「じゃあ今皆で飲んでんだけどさ、由紀も来いよ。」
「今から?」
「おぅ。女の子もいっぱいいるしさぁ」

高校から連むようになった祐介は強調するようにそこだけを大きな声で言うと、電話越しに後ろにいるのであろう何人かの女の子の声も聞こえた。

「あぁーわかった。今から行くよ。」

さっきまで読んでいた小説が久しぶりに面白いものだったから続きをこのまま部屋でぶらぶらと読んでいようか、という誘惑もあったし、女の子に釣られたわけでもなかったけれど、僕は大抵、こういう誘いは断らずに行く。
そうした方が何かと楽だからだ。

結局僕は簡単に着替えを済ませ、髪がぼさぼさな事に気づき、こんな夜中にセットをするのも面倒だからニットの帽子をかぶり、車で行くかどうか散々迷ってから、もう電車もない事に気づいて結局車のキーを手にとり外に出た。

外に出てみるとまだ秋に差し掛かったばかりなのに、白い息が出そうなほど肌寒く、僕は急いで車に乗り込みエンジンをかけた。
うっすらと月の光が照らす、車の少ない車道をゆっくりと走りながら祐介が指定した場所に向かう。
そこは、大学のすぐ側にあるいつもの居酒屋だった。
その近くに一人暮らしをしている者もたくさんいるから、その居酒屋は特に味がうまいわけでもなく、何の取り留めもない店だけれど、僕達を含め、いつも学生達で賑わっている。
僕がその店に着いた頃にはもう新しい1日が始まってから一時間が経とうとしていた。

「由紀ーこっちこっち!」

建て付けがそろそろ悪くなってきた扉をガラガラと音を立てながら開けて中に入ると、祐介がいち早く気づき、奥の座敷からひょっこり赤い顔を出して手をあげていた。
僕も祐介に気づき、ゆっくりと手をあげて座敷にあがる。

「由紀ー」
「やっぱりこいつは呼んだら来るなー」
「由紀ちゃん顔が眠そうだねー」
「こいつ、いっつも寝てっからなー」

様々な言葉がかけられる中、座敷の中をぐるりと見回すと、そこには知っている顔もいればしらない顔の奴もいた。
恐らく祐介の友達だろう、交友関係は驚く程広い。
皆ほどよくお酒が回り、できあがっている中、僕は適当な場所に腰を落ち着かせ、適当に相槌をうちながら会話に混じって笑った。
隣では祐介が勝手に僕の分のビールを注文している。

「ところで由紀、今日誘ったのはワケがある。」
注文したビールが運ばれてくる頃、祐介が改まった声を出した。
「何?それは車で来たってわかってるのに飲まさないとできない話なの?」
「いや、別にそうじゃねーんだけど…」
うろたえながらごくりとビールを飲み干す祐介を前に、僕は祐介が何の話をしようとしているのかがわかって思わず苦笑した。
「またあれか?もーいいよ。あの話は。」
「でもさぁ…」


祐介はお人好しだと思う。それは僕にだけでなく皆にそうであって、祐介は平等だ。
祐介は優しい。

「いいんだって。それ、いつの話だよ。睦月の事とかもう忘れたよ。」
「うん…」

こういう席になるとたびたび祐介は『睦月』の話―…僕が昔つきあっていた彼女の話をする。
もう二年も前の話だ。


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