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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 《風神篇》後編-11

「邪魔しちゃ悪いだろ。」




青年の横をすりぬけた後もリュナは決して油断をしなかった。前後左右、自分の持つ感覚すべてで警戒をし続けながらレプリカの元へ走る。

進む先には見覚えのない魔物の死骸がいくつも倒れていた。自分ではない誰かが戦った跡、それはレプリカなのかそれとも。

考えが深くなりそうになり、進む足が遅くなりかけた瞬間だった。

リュナの体に巻き付くように光が彼女の前をよぎる。光輝く翼、その正体の予想はすぐに付いた。

「桂?」

光の精霊・桂は自らの体から光を発している。

「カルサが私を探しているのね。」

寂しくリュナは微笑んだ。桂に手を伸ばし、触れようとした時にリュナはもう1つの力に気付いた。

勢い良く顔をあげ、その方向を見つめる。少し目を細めて様子を伺った。

「社。」

リュナは社を召喚し、身構える。

「桂、貴方も。」

そう言うとリュナは力の方向へ走りだした。言われた通り、桂は彼女の後をついていく。

この角を曲がった先にそれはいる。ちょうど曲がる手前でリュナは身を屈め、気配を消し、様子を伺った。

目に映ったものは。

リュナはすぐに立ち上がり、一歩踏み出した。目を大きく開き、進みたくても、そこから一歩も動けないほどの衝撃を受けてしまった。

リュナの目に映ったものは、ぼろぼろの姿のサルスだった。その手には血まみれのレプリカが抱えられている。

彼らの傍には地の精霊・榎の姿があり、力の気配の原因は榎なんだと頭の隅で理解する。少しずつ距離が縮まり、サルスはリュナの目の前で足を止めた。

リュナの視線がサルスからレプリカへと、ゆっくり下がった。

 彼女の意識はない。

「ごめん。」

リュナが声を出す前にサルスは擦れた声を彼女へ向けた。その言葉の意味を理解できないリュナは再び視線をサルスに戻す。

サルスは俯き涙を流していた。その姿にリュナは言葉を失ってしまう。大して働かない頭で考えようとしても無理だった。もう心が乱れている。

「オレが彼女を…オレのせいで!」

力が入る腕の中で、レプリカは本来の自分の姿で静かに納まっていた。リュナはそっと手を伸ばしレプリカに触れる。指先だけが頬に触れた。

自分の手が震えている、目が泳ぎ動揺する中で、リュナは自分を奮い立たせた。


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