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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 《風神篇》後編-10

いくつもの肉の破片と血液が彼女の横を、まるで風のように通り過ぎていく。それが何度も何度も繰り返された。リュナはうつむき加減に冷たい目をしたまま、視界の端でそれを確認する。

やがて魔物は近づくのをためらい、距離を保ったまま、己の喉を鳴らし威嚇をしてみせた。リュナはゆっくりと顔を上げて魔物達を見る。

少しずつ足を進め、手を、指の先を目の前に群れて並ぶ魔物達に合わせた。足を進めながら、指先を横に、なぞるように、斬るようにして1つの横線を描いた。

一筋の風が一瞬で流れる。


次の瞬間に、大多数の魔物が切り刻まれて、元の姿を留めていなかった。一同に崩れ落ち、視界は一気に開けて見える。道を塞ぐようにちらばった残骸の真ん中を風で斬り、リュナはそこを通って先にあるレプリカの元へと走った。

それでも邪魔をするように魔物達はリュナに襲い掛かってくる。

「どいて!!」

邪魔するものには容赦無くリュナの風が斬りかかる。倒しても倒してもキリがない程、何体もの魔物がそこにはいた。

ただ前に進むことを阻む者だけに集中し、リュナは走り続けた。また向かってくる魔物を切り裂こうとした瞬間。


黒い煙のようなものに巻かれた魔物達は、まるで刻まれたように崩れ落ちた。しかしそれはリュナの力ではない。

「なにっ…!?」

驚きのあまり、思わず声が出た。崩れ落ちた魔物達の向こうに人影が見える。リュナは目を細めた。

ゆっくりと近づいてくる姿はやがて鮮明になり、それは見たことない青年だと分かった。襟足だけ伸ばした、印象のある赤い髪。

「先、急いでるんだろう?」

「え?」

青年は低く優しい声をリュナに送った。意外な状況にリュナから疑問符ばかりが生まれる。

「行きな。」

優しい笑顔、彼はリュナが向かう先を親指で指し、彼女を促せた。リュナの前、彼の背後に先はある。

突然現れたこの青年は信じるに値しない、しかしここで意地になるのも意味がなかった。

まるで睨み付けるように、探るようにリュナは青年を目に焼き付ける。やがて一言も発せずにリュナは走りだした。

青年の横をすりぬけて前へ前へと風のように進んでいく。青年は彼女の後ろ姿を立ち止まって見送った。

追おうとする魔物達を制するように両手を広げ、彼らに視線を送った。不適な笑みを浮かべる。

「行かせてやれよ。」

怪しく光る瞳に、まるで捕われるように魔物達は動かなくなった。己の喉を鳴らし威嚇する姿勢も弱まり、前のめりだった姿勢を次第に起こしていく。

そんな魔物達の姿を見た青年は彼らを鼻で笑った。


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