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face【 顔 】
【純愛 恋愛小説】

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face【 顔 】-5

「友彦くんからは、なにも聞いていないよ…ボクは花梨の婚約者だからね…じきに、わかったよ…でも、それを認めるコトが怖かった…花梨が死んだと認めることが」
 柊一は、杏里の顔を見た…泣き顔の婚約者の顔を…脳裏に焼きつけるように…。
「ボクのそんな、花梨の死を認めたくなかった気持ちが、杏里ちゃんを苦しめていたんだね…すまなかった…最後に一つだけ…ボクのわがままを許してくれ」
 柊一は、杏里を強く抱き締めると…一言、囁いた。
「さようなら…花梨」
 杏里を体から離す、柊一…柊一は、にっこりと笑った。

「さあっ…BFがあそこで、心配そうな顔で待っているよ…ほらっ」
 見ると、公園にこちらを見ながら立つ友彦の姿があった。
「さあっ…行った、行った」
 柊一は、杏里の背中を軽く押した…振り返る杏里に柊一がうなずく。
 杏里が駆け出す…同時に友彦も駆け出す。
 二人は、公園の中央で泣きながら抱き合った。
「杏里…おかえり…今なら言える…好きだ! オレ…杏里がどんな顔になっても、杏里が好きだ!」
「あたしも…友彦が好き! 世界で一番、友彦が好き! ただいま!友彦」
 柊一は静かに、二人に背を向けると…辛そうに空を見上げた。

 遥かな夕暮れの空に、遠方を飛ぶ、旅客機の爆音と飛行機雲が見えた。
(お姉ちゃん…あたし、お姉ちゃんの生きたかった分も幸せになるからね…ぜったい、ぜったい幸せになるからね…)

 花梨の顔をした杏里は、少し微笑みながら…いつものクセで、首をかしげて前髪を掻き上げると…友彦と唇を重ねた。

 その時…杏里は空の彼方から姉…花梨の
『がんばりなさい…杏里』
 と、いう言葉が、かすかに聞こえたような…そんな気がした。

【完】


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