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僕とお姉様
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僕とお姉様・最終話〜僕と一緒に暮らしませんか〜-2

結局どれくらいそうしていただろう。瞼が重いなんて考えながら体を反転させると、その過程でひばりちゃんの姿が視界に入った。腕組みをしてドアにもたれ、冷ややかな目で僕を見ている。

「やっと気付いた?」
「声くらいかけてよ」
「何回も呼んだ」
「あ、そ」

目が腫れてない事を祈りつつ、のそのそと体を起こしてベッドの上であぐらをかいた。
ひばりちゃんは僕の前まで来ると、

「はい、これ」

差し出された手が持つものは二つ。
一つはさっき八つ当たりした携帯電話。電源は切れたままだけど、外れた電池パックは取り付けられている。
もう一つは少し重みのある封筒。

「何?」
「お姉さんから」
「え!?」

聞き返すより早く封筒を開いて逆さにした。まず勢いよく左手に落ちてきたのは家の鍵。前にお姉様が僕の鍵を無断で持ち出して勝手に作ってきた合鍵だ。問い詰めると、悪びれる様子もなく得意気に言った。

『帰りが遅くなった時に必要でしょ』

呆れたけど、嬉しかった。これからもここにいてくれる証明みたいに聞こえたから。
でも、こんなもんだったんだ。
すっかり落ち込んだところで、次に封筒から出てきたモノ。
二千円…
言いたい事はすぐ分かった。これは前に二人で始めた賭け。僕らだけに通じる失恋の証だ。
お姉様の失恋。
誰に?

「お姉さんは強君が好きだったんだよ」
「………は?」
「今聞き返すのに間があった」
「そりゃ―」
「強君だってほんとは気付いてたんじゃないの?」

僕?
お姉様が?
…んなばかな。
と言いつつ、思い当たる節がないわけじゃない。
例えば母さんの家から戻った日に大泣きしてくれた事、その時に言われた大好きって言葉。後輩に告白されたと知った時の態度、やけ酒に、キス。

でも―…

…まただ。
自惚れるなって聞こえた気がした。
ついさっき大っ嫌いって言われたばかりじゃないか。キスは酔った勢い。大好きなんてその場の雰囲気でいくらでも言える。
心当たりなんて、結局は自意識過剰でしかないんだ。

「強君とお父さん、ほんとそっくりだよね。何となく気付いてるくせに知らんぷりするの」
「…へぇ」

あいつにそっくりってのは心外だな。
それにお姉様が僕をどう思ってるかは置いといて、いくらあの親父でもまさか息子より年下の女の子に好かれてるとは夢にも思わないだろう。

「連れ戻してよ」
「簡単に言わないでくれる?」

こっちは手掛かりが一つもないんだ。探したいけど、戻って来て欲しいけど、僕には何も―…

「強君」
「何」
「あたし、お姉さんがいないと困るの」
「何で…っ!?」

それは息が止まるほどの衝撃だった。
ひばりちゃんの腕がすっと僕に向かって伸びて来て、そのまま引き寄せられるように、抱き締められた。
え?
え!?
ええっ!?
なになになになに?
現状が把握できない。いや、されてる事は分かるんだけど、何でこんな事になっちゃってんの?
完全に金縛り状態。そんな中汗だけが猛烈な勢いで垂れていく。

「お姉さんがいないと、あたし、強君を…」

そう言ってギュッと腕に力を入れた。
何言い出してんの、この子!!待って待って、おかしいってこんなの。そりゃ少し前まで好きだったけど、今は違うし!いやいや、僕の気持ちなんかどうでもいい。それ以前にひばりちゃんには…っ
絡み付く腕を無理矢理ほどいて力任せにその体を離した。


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