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僕とお姉様
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僕とお姉様〜始まり〜-1

僕の2つ年下の幼なじみは可愛くて明るくて、世界一大好きな女の子。僕達はいつも2人一緒でこの先もそれは変わらないと信じてた。
僕んちが突然父子家庭になると、あの子はうちに来て家事を手伝うようになった。子供ながらに夫婦みたいだなって思ってた。
3年前、15才の僕にあの子は問いかけた。

「あたしが16才になったらここにお嫁に来てもいい?」

少し赤くなって、でもはっきりそう言った。
断る理由なんてない。
何度もこくこくと頷くと、良かったと嬉しそうに笑った。この瞬間を一生忘れないと誓った。

約束の年、僕の隣にあの子はいない。
ずっと大好きだったのに、16才になったばかりの今日―…


現実が受け入れられず、雨の中宛もなく歩き続けて転んだ場所はあの子とよく来た図書館。
冷たい秋雨に打たれて死ぬのも風流かもね。
人通りの全くない深夜の図書館の隅で、そんな事を考えて寝そべっていた。

「死体?」

誰もいない筈なのに、頭上から女の人の声がする。傘をさしてくれてるらしく、容赦なく降り注ぐ雨が部分的に治まった。
泥の付いたスニーカーと黒のハイソックス、その上はミニスカートで、これ以上目線を上げると見てはいけないモノが見えそうで慌てて起き上がった。
改めてその人を確認する。暗くて顔は見えないけどまぁ若そう。気になったのは右手に握られている一升瓶だ。明らかに日本酒…

「生きてんのか」

がっかりした口調で言って、一升瓶に口を付けた。
酔っ払いだ。
ついさっき人生最大の不幸を経験したばっかなのに、何でこんなめんどくさそうな人と出会っちゃうんだろう。

「ねーここどこー?」

ろれつ回ってないし。

「図書館です」
「はっ?駅じゃないの?」

どこが駅だよ、超静かだし真っ暗だし。

「まーいーやー、あたしもここで寝るー」

いきなり傘を放り投げてその場に横になろうとするのを、

「ちょっと!」

引き止めてとりあえず雨の当たらない正面玄関の軒下に引きずり込んだ。
そこには本の夜間返却boxがあり、それを照らす為の申し訳程度の照明のおかげで顔を見る事ができた。
酔っ払ってる事以外では結構綺麗なお姉さんだ。こんな状況でなきゃ知り合えた事を喜んだかもしれない。

「あれ、雨やんだ」
「屋根の下です」
「え、あんた誰」
「…たまたまいた者です」
「名前と年を聞ーてんだろーがー」
「……山田強、18才です!?」

答えた瞬間胸ぐらを掴まれた。

「貴様平成生まれか!!」
「…」

何なんだよ、この人。秋雨がどうとか言ってたさっきまでの自分が懐かしいわ。
至近距離で睨まれたまま、また酒を飲み出す。

「あまり飲まない方が…」
「平成生まれが指図すんじゃねぇっ」

どうもこの人は平成生まれを嫌っているらしく、元々いっちゃってた目が更にヤバくなった。
変な人に関わったと後悔してもここに置いてくわけにいかないし、家を飛び出して来た身なので帰る場所もない。
仕方なく朝まで付き合う覚悟を決めた。

「お姉さんは何かあったんですか?」
「お姉様だろ」
「…お姉様は何かあったんですか」

相手は酔っ払い

強く自分に言い聞かせた。
お姉様はチッと舌打ちをしてまた酒を飲んだ。


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