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春雨
【純愛 恋愛小説】

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Rainy day vol.3-1

それから、彼は月・水・金の19時前後に現れるようになった。

比嘉家に連絡して私との見合いの事は伏せてもらっているので彼はまだ知らないはずだ。


私は彼と色々な話をした。日本経済・国際情勢・歴史…etcあまりの博学ぶりに脱帽したことが何度もあった。

そして、今日も…
「…パレスチナ問題?」
私の淹れた紅茶を啜りながら国際問題を取り上げてきた。
「また、随分難しいのを持ってきたわね。」
「春美さんの苦手分野を見付けたくてね。」
「…残念ながら得意分野よ?」
「ちっ。
苦手なものってないの?」

「………日本の社会制度?」
「はい?」
私の答えに彼は間抜けな声を出した。

「ウザくない?
面倒だし。私は実力至上主義だから迷惑なのよね。」
「欧米的な考えだね。」
「日本に居ない期間の方が長いから。」

ダージリンの紅茶をを啜りながら答えると、彼は一瞬停止した。


「……帰国子女?」
「あら、言ってなかった?
親の海外転勤で色々連れていかれてたの。」
「なんで向こうで就職しなかったの?」
「…大人の事情は複雑なのよ。」
順調に荷物の減った部屋を見渡し呟いた。


引っ越しまで一週間を切っていた…。
彼はまだ何も知らない…。


次の日曜日

あれから彼とは会っていなかった。
忙しいのだろうか…。

どうせ半月後にまた会うと分かってはいても、このまま彼の前から姿を消すことになると思うと、もやもやしたものが心に渦巻いていた。


いや、こっちには居る…ただ、二週間ホテル暮らしになる旨を伝えていないだけ。

彼の家の連絡先を私は知っているが・・。


「…春美さま、荷物は以上でよろしいですか?」
若い男性が私に近づいてきて尋ねた。
どうやら詰み込みが終わったらしい。
「…ええ。
私の部屋…無理なら他の空き部屋にでも詰め込んでおいて?
帰ってから片付けるから。」
「畏まりました。」
「…じゃ、吉野さん、後は宜しくね。」
私は実家に向かうトラックを見送った。

去り行くトラックを見ていると、先週彼とした紅茶の話が頭を掠めた。


あの時は、勉強の話をしていて、私が茶葉の交換のために席を立ったとき、茶葉が切れていることを思い出して……。


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