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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統〜恋人〜-8

「あの、先生…ちょっと聞いてもいいですか?」
「うん?…あ、ちょっと待って!」
「はい?」
「あのね、二人きりの時は先生って呼ぶの止めない?」
「ああ、はい。分かりました」
「敬語も禁止ー」
「う…わ、分かった…よ、陽子…さん」
「あ…」
いきなり赤くなる陽子。
「…どうしたの?」
「うん…何だか、好きな人に名前で呼ばれるのって、すごくドキドキするね…」
「そ、そう…」
そんな事を言われると、宗太まで照れてしまう。
「私も、名前で呼んでいい?」
「もちろん」
「よかった…宗太」
「あ…う…確かに、ドキドキするかも…」
「えへへ…そうでしょ?」
二人でどんどんピンクな空気を構築する。
バカップルだった。果てしなくバカップルだった。



「あの、それで聞きたいことなんだけど…」
「なあに?宗太になら3サイズだって教えちゃうよ」
ニコニコと、嬉しげな表情の陽子。
「……そ、それはまあ後々にでも。で、気になったのは本当大したことじゃないんだけど、よくこんなマンションに住めるなあって思って。車も高そうだったし」
「あ、えっと…それはね…」
どことなく、気まずそうに言葉を詰まらせる陽子。
「あ、別に言いたくないなら…」
「ううん、いいの。宗太には全部話そうって決めたから。…えっとね、屋上で高校と大学時代に学費と生活費を援助してもらってた人の話をしたじゃない?その人が私が大学卒業する時に、卒業祝いだって言ってこのマンションと車を買ってくれたの…」
陽子は親に怒られる子どものように、不安げに宗太に話しをした。
以前肉体関係を持っていた男に買ってもらったなんてことは、確かに言いにくい内容だ。
今聞かされて、実際宗太も複雑な気分になっているし。
「でもねっ!今は完全に連絡絶ってるし、もう何もない赤の他人だし!だから、えと…!」
宗太の気持ちが顔に出ていたのか、陽子は急に弁解めいたことをまくし立てる。
そんな姿を見たら、宗太の気分も何だか軽くなった。
「大丈夫ですよ。そういうの聞かされて……ちょっとイヤですけど、嫌いになったりしないですから。だから、心配しないでください」
笑顔で、陽子に語る。
やはり陽子自身、自分の過去の出来事は大きな不安要素になっているようだ。
ならば宗太は、彼女の過去を受け入れた上で、全てを愛しているという姿勢を見せなければいけないと思った。
「う、うん……て、あ、また敬語…」
「え?……あっ!いや、これなかなか慣れなくて…ごめんっ」
宗太の慌てる姿を見て、陽子が可笑しそうに笑う。
「ふふ…そうだよね。私達は先生と生徒でもあるから。でも、今は慣れないかもしれないけど、これからゆっくり慣れていこうね」
キュ…と、陽子が宗太の手を握ってきた。
その遠慮がちな行為に、陽子の愛情がたっぷり含まれているのを感じた。
「…うん」
そして、宗太も陽子への気持ちを表すように、優しく握り返してあげたのだった。



それから、陽子が夕食をご馳走してくれるとのことで、宗太はお言葉に甘えていただくことにした。
お昼の弁当でも分かっていたことだが、彼女はかなり料理が得意のようだ。
何でも、高校の頃からずっと1人暮らしだったから、自然と慣れていったとのこと。
兄夫婦の家に転がり込んで、食事も作ってもらって甘えてる宗太には、耳の痛い話だった。


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