投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『理不尽な話』
【その他 その他小説】

『理不尽な話』の最初へ 『理不尽な話』 3 『理不尽な話』 5 『理不尽な話』の最後へ

『理不尽な話』-4

「こいつは悪いことをした。それを償わせただけだ」

「そうだ」

「その通りだ」

「悪いのはこいつだ」

 すると空が薄っすらと明るく光ります。

 空から立派な白い髭の老人が現れ、言いました。

「なんということだ……」

 老人はゆっくりと少年に近づき優しく抱きかかえます。

 その老人は、泉に住んでいた神様でした。

 皆が跪きます。

「お前たち、この子に何をした」

 そして一人の大人が言いました。

「こいつはあなた様の泉を汚した罪人として、我々が裁きました」

 とても誇るようにその大人は言います。

「なんと愚かな者たちだろう! この子が何をしたかも聞かずに、このような行為に及んだというのか!」

 神様はぽろぽろと涙をこぼします。

「なんと哀れな子だろう……あの日からずっと、私に許しを乞うていたのに……。私がもう少し早く許してやれば」

 少年は、あの日からずっと神様に謝っていました。盗んだものとはいえ、お供え物を毎日していました。泉に浮いているごみを、毎日拾いました。膝を地に着け、深く頭を下げ、泣きながら何度も謝っていました。

「この子が昔言っていた通りだ。子供も助けられない神が、何を言う権利があるというのだろう。すまない、すまない……」

 神様は泣きます。泣きます。泣きます。

「おぉ、愚かな者たちよ。自分たちが裁きを下せる権利があると思い、この子を痛めつけるとは。何も見ない愚かな者たちよ、一生後悔し、生き続けよ。この子が受けた苦しみをお前たちも受けるがよい」

 そして、神様は少年を抱えたまま空へと戻っていきました。

 それを大人たちはただ黙って眺めることしかできませんでした。

だって、自分たちは正しいことをしたと思っているのですから。


『理不尽な話』の最初へ 『理不尽な話』 3 『理不尽な話』 5 『理不尽な話』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前