『理不尽な話』-3
「君は……」少年が言葉を続けようとしましたが、男の子がそれを止めるかのように叫びます。
「泥棒だ! やっぱりあいつが今までの泥棒の犯人だ!」
少年は再び泣きました。今度は辛くて泣いたのです。
少年は村人が自分を嫌っていたことを知っています。でも、この子だけは、自分が正しいことをしたとわかってくれていると思っていたのです。
村の大人たちがたくさん出てきて、少年を追いかけます。大人たちは、鍬やら、包丁やら、棒切れやらを手に持っています。少年は腕に野菜を抱えて必死に逃げました。
いっぱい、いっぱい走りました。もう息ができないのではないかと思うほど、必死に走りました。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
少年は泣き叫びながら、まだまだ走ります。悲しくて、辛くて、苦しくて、心が痛くて……。
やがて、少年はあの泉の前に着きました。
泉は黒くて、変な臭いがします。
ここまで逃げれば大丈夫と思った少年は、いつものように「いたぞっ!」「あの泉だ!」「悪魔の子がいたぞ!」「こっちだ!」しました。
少年は追い詰められました。
「お前のせいで!」
「お前がいたせいで!」
「お前があんなことをしたせいで!」
少年の友達だった男の子が、前へ出てきました。
「お前があんなことをするから!」
それは少年にとってはとても残酷な言葉でした。助けたことが悪いことだと言われている気がしたのです。
「僕は悪いことをしていない!」
少年は言い返します。泣きながら、苦しみながら。
「何を言うんだ、悪魔の子め!」
大人の一人が、手に持つ棒切れで少年を殴ります。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
少年があまりの痛さに叫びます。
でもその大人はやめません。しかもそれに続くかのように、次々と大人たちが少年を痛めつけます。
「やめて、やめて!」
少年は叫びます。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
ぐちゃ、と辺りに響くようなにぶい音がしました。
その音と同時に、少年の叫びが消えました。
大人たちが少年だったものから身を引きます。少年だったものは、いとも無残な姿になっていました。それは人だったとは到底考えられないくらいでした。
大人たちが息切れしています。
すると誰かが言いました。