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ewig〜願い〜
【悲恋 恋愛小説】

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『ewig〜願い〜by絢芽』-8

「あ……絢芽!!絢芽!起きて!!」
夜寝ていたら、先輩が叫びにも似た声を上げていた。
辺りは火の海だった。
先輩たちの噂は本当だった。
しばらくぼうーっとしていたら、私を起こした先輩はいなくなっていた。
私死ぬんだな――。
なんて、冷静に考えていた。
いや、考えようとしていた。
このまま死ぬんだろうかと考えていたら、急に怖くなった。
今私は一人だ。
このまま誰にも気づかれぬこともないまま、一人で死んでいくんだろうか――。
そう考えていたら、怖くなって、涙が出てきた。
ふと、嵩雅様の顔が頭をよぎった。
そうだ、嵩雅様はどうしているんだろう。
私は無我夢中で嵩雅様の寝ている棟へと急いだ。
早く、会いたい――。
どうせ死ぬなら、あの人の腕の中で死にたい。
だけれど、火は着実に私に追いつき、囲もうとしてた。
たった一つの私の願いも叶えられることのないまま私は死んでいくんだろうか……。
私は恐怖に耐え切れなくて、その場にしゃがみこんだ。



思えば、嵩雅様のやさしさに触れていたのはほんの少しの期間だった――。
秋から冬に変わるほんの少しの期間。
だけれど、私は嵩雅様に恋をした。
この想いは伝わることなく終わってしまうだろう――。
そう思っていた時、名前を呼ばれた。
「絢芽!!!!」
聞きたいと思っていた声がした。
愛しいあの方の声――。
見上げるとそこには会いたいと願っていた人がいた。
「嵩雅様!!!!」
私が名前を呼び終わるか終わらないかの時に、私は嵩雅様の腕の中にいた。
神様……最後の最後に私の願いを叶えて下さるんですね……。
私はこの人の腕の中で逝けるんだ……。
それだけで今までの恐怖は消えていくようだった。
辺りはもう火に包まれていた。
だけれど、嵩雅様の腕の中にいるからか、恐怖はさほどない。
初めて、抱きしめられているのに、安心していた。
「絢芽……、良かった。死ぬ前にお前を見つけられて……。」
やさしい声で嵩雅様は呟いた。
どんどん恐怖心がなくなっていく……。
「嵩雅様……私……怖かったんです。一人で死ぬの……。」
私は素直な気持ちを嵩雅様に伝えていた。
私を抱きしめている嵩雅様の腕の力が強くなった。
「大丈夫。俺がついているから。」
そういうとより一層、嵩雅様は力強く抱きしめてくれた。
私が持っていた恐怖心はすべて流れていった。
嵩雅様の体温や、嵩雅様の香りに包まれて、心地よさでいっぱいになっていた。
どれくらいそうしていただろう……。
もしかしたらほんの数秒、数分だったかもしれない。
だけれど、私には長い時間抱きしめあっていたように感じていた。
「絢芽…・・・俺、死ぬ前にお前に伝えたいことがあるんだ……。」
そういって、嵩雅様はゆっくりと口を開いた。
私の胸は高鳴っていた。
もしかしたら、私のことを好きだと言ってくれるのではないか。
そんな自惚れたことを考えていた。
「俺……お前のことが……」
そこまで言って、嵩雅様の腕に力が入った。
その瞬間、私の背中に痛みと熱さが走った。


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