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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.7-2

シャープペンシルをくるりと一回転させては持ち直し、と繰り返していた啓介は大柄な体格の為に一番後ろの席である。真ん中や前列に座るものならば壁の様だと非難を浴びるのは必須だ。
勿論、後ろの席は嫌いでは無い。啓介は背中を伸ばしながら前列にいる英理子の後ろ姿を眺めた。誰に遠慮する事なく、思う存分見つめていられる。
ワイシャツを押し上げる肩甲骨や、後ろ髪の隙間から時々見える真っ白なうなじ。他のクラスメートなんて目に入らない。木田英理子だけが啓介にとっての特別なのである。

木田英理子と言えば誰もが口を揃えて言うほど¨おとなしい子¨だ。
体つきも悲しいくらい痩せていて、胸もお尻もうっすらと脂肪がある程度。クラスで一番背の低い島原美樹よりも小さく見える。
透き通るほどの色白に、背中の真ん中で切り揃えられた真っ直ぐな黒髪。前髪も真っ直ぐで日本人形みたいである。それに相成った声の小ささや控えめな態度が、余計に英理子を小さく見せていた。
歩くガリバー、そんな呼び名の啓介とは真逆の英理子。二人の関係は一年の初夏から始まった。
内気な英理子と無口な啓介。付き合うまでに長い時間がかかった。初な二人の歩みは遅く、初キスに三ヶ月、初エッチまでは半年かかった。
二人の寄り添う姿は模範的な恋人のようで、理想のカップルだと持て囃されたりもした。
幸せだった。幸せ過ぎて他にどう表現をしたらいいか、そのくらい幸せで。二人の間に笑顔は絶えず、いつも温かだった。
だが、一つの間違いが、事件が、二人を傷付け、悪化させ、化膿させ、二度と塞がらない二人の溝となっていき………自然消滅………。二人の距離は離れていったのだ。


「木田さん、この問題を前でやって頂戴」

英語教師の声で我に帰ると、指名された英理子がか細い声で前に出て行くところだった。
(どうか間違えませんように)
啓介は自分の事の様に心配をし、英理子の綴る答えを眺める。クラスメートだから、じゃなくて、まだ好きだから。この色褪せない思いは自分だけなのだろう。今でも都合よく、あの頃に戻りたいと願う気持ちを抱えきれずにいる。
答えを書き終えた英理子と目が合う。英理子も気付いたのかあからさまに視線を反らした。
こうなった原因は他でもない自分にあるのだろう。啓介はあの頃の自分を酷く責め、ジクジクと痛む胸を抱えながら今でも右往左往している。
あの頃、あの時、あの一瞬……。
悔やんでも悔やみきれない、自分の判断が間違った日を啓介は今も引きずっていた。





啓介と英理子が一年半以上付き合った、二度目の十二月。二人はどこに行くとも無く、専らお互いの家に行き来して、冬休みと言う名の甘い時間を過ごしていた。
啓介の部屋は狭い。
身体の大きな啓介の為のロングサイズのシングルベッドが部屋の大半を占拠し、机と箪笥しかないのだがテーブルを置くスペースすらない。
二人はいつもの様にベッドの上で他愛のないお喋りを交わし、時折宿題をし、飽きればキスを交わしあった。
石油ファンヒーターの燃える匂い。英理子がいつも持参してくるミルクティーの甘い香り。窓枠を伝う結露。啓介の匂いが染み込んだ枕。時々、扉を開けるように催促する、猫の爪を立てる音ですら幸せに感じた。

キスをしながら互いの身体をなぞりあう。服の上から互いの心音を確かめ合う。まるで子猫同士がじゃれ合うようにほほえましい。
舌を絡ませ相手の唾液を感じる頃には、ただのじゃれ合いが段々と本気になる。横向きの状態から仰向けになり、啓介が上に覆いかぶさると二人は照れながら囁く。


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