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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 4-6

「……」
「……」
早くも奏ちゃんの手札は一枚、俺が二枚。
奏ちゃんが俺からハートの2を引ければ奏ちゃんの勝ちだ。

奏ちゃんは強い意気込みを発していた。
そんなに勝ちたいか…
一体、なにを言おうとしているのだろうか。
「終わりですっ」
そう叫ぶ奏。
意を決してピッと俺の手札からカードを引く。
「……」
「残念だったな」
奏ちゃんはジョーカーを引き、一気に俺が優勢になる。
それにしても、奏ちゃんが泣きそうになっているのは気のせいか?
だが勝負は厳しいものだ。
「終わりだ!」
俺は同じようにピッとカードを引き抜く。
「……」
「ふふ」

しっかりジョーカーを引く俺。

そしてあっさり次でハートの2を引かれて負けてしまった。

「やったあ」
奏ちゃんはすごい笑顔だ。さっきまでの涙目はどこへいったのか。
「……じゃあ、約束どおり、ひとつ言ってくれ、何でもいいぞ」

美沙の言ったこと以外ならな。

「…あの」
「うん」
やはり決めていたか。さあなんだ?
「……私のこと」
な、まさか…俺と同じことを聞こうとしていたのか?
「私のこと、これからは奏って呼んでください!」

ズルッ。

折りたたみ椅子から勢いよくずり落ちた。

これが美沙の指示か?
まあそれっぽいが。

奏ちゃんは言い切ったあと、恥ずかしいのか俯く。
「…わかった、これからは奏な」
「は、はい!」
すごい嬉しそうだ。
「あの、私は春陽さんって呼んでもいいですか?」
「え、まあ構わないけど」

驚いた。

女性に下の名前で呼ばれるなんて久しぶりだ。
「えへへ、春陽さん」
無意味に呼ぶ奏。
なんだか新鮮だ。

案外、最初から負けてもよかったかもな。
何も焦ることはないんだ。
「なんだ、奏」
「……」
ボーっと俺の顔を見ている奏。
「おーい」
奏の瞳は、確かに潤んでいた。


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