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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 3-4

「で、なんであたしがせっかくの休みに病院に行かなきゃいけないのよ」
「いいだろ、いつも行ってるんだから」
「もう二週間以上行ってないわよ」
「……」
隣でぶすくれる美沙。

俺は日曜、美沙を連れて奏の病室に向かっていた。

あのとき、美沙に会わせてあげたいと思った。
そしてできれば友達同士に。
そんな期待を俺は胸に秘めていた。

「あ、ここのケーキ美味しいんだってね」
「へえ」
病院に向かう途中、小さなケーキ屋に目を向ける美沙。
次の一言は容易に想像できた。
「兄貴、ショートケーキ」
ピッと人差し指を立てる美沙。
「オーケー」
交渉成立。
二人を引き合わせるためならケーキの一つくらい、喜んで買ってやる。

美沙の笑顔も見れるし一石二鳥だ。




***

コンコン

「ちょっと兄貴、なんで普通にノックするのよ」
「あ?」
「あたしのときは勝手に入るくせに」
「格が違うんだよ格が」
俺は適当に理由を作って病室に入る。
「もーっ!」
美沙も頬を膨らましながら後に続いた。


「よー」
「あ、天道さん、日曜日に来られるなんて珍しいですね」
奏ちゃんはいつものようにベッドに足を伸ばして座っていた。
「…こんにちは」
美沙も挨拶する。
「……」
しばし硬直する奏ちゃん。
「おーい」
俺が返事を促すと、小さな声で言った。
「天道さん…奥さんがいたんですね」
「へ?」
「はじめまして、奏といいます。旦那さんにいつもお世話になってます」
そう言って深々と頭を下げた。
「…」
「どういうこと?」
「いや、わからん」
「…という冗談です」
奏ちゃんはえへへ、と笑った。
「…」
「…」

寒い風が病室を抜けた。

「え?今の面白くなかったですか?」
「ちょっとバカ兄貴!なに変なことおしえてるのよ!」
美沙はバシバシと俺を叩く。
「俺は知らん!いてえ!」
「イメージ通りです」
奏ちゃんはそう言ってクスッと微笑む。
「ですからお二人のイメージに合わせて笑いをとろうと試みたんですが…つまらなかったですか?」
「あ、いや、面白かったよ。意外性があって」
「……兄貴、あたしたち、こんな風に思われているのね」
「すまん、そんなつもりじゃなかった」
「チョコレートケーキ追加」
「ぐ」
まさかの追加オーダー入りました。


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