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十の夜と夢の路
【悲恋 恋愛小説】

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十の夜と夢の路-5

「へぇ、キミ、※※ちゃんっていう名前なんだ」
「そうよ。※※でいいわ、十夜くん」
「ぼくも十夜でいいよ」


「十夜、今日はあたしの誕生日なの!」
「本当!?じゃあ、コレあげるよ!」


何故だ!?何故あの少女の名前が思い出せないんだ!?
その少女の誕生日にあげたのは……そう、俺が何気なくもっていた安物のペンダントだ。母が懸賞で当てたというのをもらったやつだ。
ペンダントの形は…………色は…………全く思い出せない。


「ねえ※※」
「なぁに?」
「今日、※※の家に遊びに行ってもいいかな?」
「もちろんよ!いつでもいいわよ」


「ねぇ十夜?」
「どうしたの?※※」
「あたし、十夜のこと好きだよ?」
「…………うん、ぼくも※※が好き」


そして俺たちは約束をした。将来、結婚しよう、と。


閉ざしてしまった記憶は、ここで途切れた。つい3年前の記憶を忘れるほど、俺には辛い出来事だったのだろうか。

帰宅した直後から、俺は記憶を思い出すのに必死だった。夢路は俺の部屋で静かにしている。やはり、ショックなのだろう。
そのショックを少しでも和らげたいがために、俺は辛い記憶を無理矢理思い出そうとしたが、どうしても思い出せないものがあった。
俺が約束した少女は、誰なのか。それは、遠い記憶の底で、深く眠っている。


「十夜くん、もう大丈夫?」
「ああ平気だ、心配かけたな」
「そんな、わたしのせいなんだから、むしろこっちが謝らなきゃ……」
夢路はまだふっ切れないらしい。俺は、そんな哀しい顔を見たくはない。だから、
「今から謝ったら、怒る」
「ふぇっ!?」
「小枕夢路が今から一度でも『ごめんなさい』って言ったら、怒る」
「うぅ…………」
俺の言った冗談に、夢路は本気で困った顔をする。俺は、慰める意味を込めて言う。
「だから、もう気にするな」
すると夢路は泣きそうな瞳で、
「うぅ…ごめ──」
「言うなよ」
「…………はい」


一段落し、俺は眠る用意をする。夢路は昨夜、病院で夜を明かしたというので、俺の部屋で寝るのは初めてだ。
「すっごく、緊張しちゃう……」
「別にいやらしいものは置いてない。あったとしても、目に見える場所には置かない」
「じゃあ……あるの?」
「無い!」
すっかり気をとり直した夢路と会話を楽しみ、夢路が来てから2日目の夜を迎える。夢路はそのまま寝入った。俺はリビングのソファーに横になり、記憶をいろいろ考える。
だが、既に体力は限界。結局、その夜は素直に眠ることにした。
夢路と俺は結局、この10日間、学校を休むことにした。俺は療養、夢路は……それ以前に家が無いのだ、それは学校側も解ってくれていた。


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