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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?5〜難航のプレゼントとこめられたコトノハ〜-8

「…電話番号、交換してください」

新たにひねり出した。
その願いに、誠司はしばし呆気にとられる。
「あ、その……」
しまった――湊は自分の突飛な発言を悔いる。
この場合、物をねだってみるとか、食事を奢ってもらうとかの普遍的な答えを用意するべきなのだ。それなのに自分と来たら、「電波番号を教えてください」だなんて――
「…め…迷惑な願い、ですよね…」
しかも、即座に取り消すならともかく相手に確認をとっている。そんな事をすると大抵は断りづらくなると、わかっているはずなのに。

これでは、彼にマイナスのイメージを与えてしまう。

そう思った湊ではあるが、出した言葉を今更引っ込められるはずもなく。
かと言って、これ以上迂闊なだめ押しは嫌で。
ただ黙って、誠司の反応を見るしかなかった。

――ややあって。

「…いいですよ、別に」

ある意味予想通りの答えが返ってきた。
ただし表情は予想に反して、笑顔。それも、作り笑いでも何でもない、正真正銘のもの。
「…本当、ですか…?」
それを目の当たりにした湊の口から、我知らず別の意味での確認の言葉が漏れる。
しかしそれは短絡的。余程深読みしても、そうそう手繰り寄せられるようなものではない。そもそも誠司は、そういった深読みをするような疑り深さも勘の良さも持ってはいない。
「どうせ、合コンの時にメアド交換してますし。俺は構いませんよ?」
よって、言葉を言葉通りに受け止め、承諾の理由を告げた。ついでに、意思表示のために鞄から携帯を取り出す。
対する湊は、しばし茫然と誠司の携帯を見つめ、彼の言葉を反芻する。そして、わかりきっているはずの言葉の意味を、何度も何度も確かめてから、はっとなった。
「…じゃ、じゃあ、お願いしますっ」
慌てて自分の携帯を取り出して開く。

そして、二人はその場で電話番号を交換した。

「…なんか、お礼をした気になりませんね…」
湊の電話番号を登録し終え、携帯をしまった誠司は、しかし納得しきれていない様子で呟く。
「電話番号は、交換って形ですし…」
「…そ、そうでしたね」
たじろぐ湊。しかし、考え込む誠司は彼女の狼狽に気付かない。そのまま、顎をさすりながら視線をあちらこちらへと向ける。
それからややあって、彼は湊の方に向き直った。
「…どうせですから、夕飯でも奢りますよ」
そして提案。すると湊はすかさず、「い、いいですよ、そんな気を遣わなくても」と首と手を振る。
「そういう気ぐらい、遣わせてください」
だが誠司は譲らない。湊を見据え、明瞭な声で断言する。
「結構感謝してますし、これからも湊さんとは仲の良い友人として付き合っていきたいんですから」
そしてその理由を告げ、理解を得ようとする。
しかし、その言葉は、誠司の意図とは少しばかり違うものを引き起こした。

「え……と、友達…ですか…?」

頬が赤くなる。
体が落ち着きなく動き出す。
あちらこちらへと視線が移る。
それらの態度は、湊の動揺を如実に示すもの。
そしてその言葉は、動揺する理由を示すもの。
誠司は、だからこそ解せない。彼からしてみれば、湊とは既に友人――でなければ知人――のような関係にあると考えている。会った回数こそ少ないが、現に今日二人は共に街を練り歩いている。そんな事は、友人や知人でなければしないであろう。
「…何か変な事、言いました?」
だから彼は聞いてみる。もしかしたら、自分が気付かないうちに失言をしていたのではないかと疑って。
すると湊ははっと我に返り、びっくりしたような表情で誠司を見る。そして明らかに慌てている様子で、必死に首を振った。


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