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銀の星〜森の広場 編〜【R】
【ファンタジー 恋愛小説】

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銀の星〜森の広場 編〜【R】-2

 それは、リレイがなぜ三発も外してしまったのか、その要因をあれこれと考えていた時のことでした。
 人の鍛練に口を挟む、不躾な輩がいたのです。
「ちょっと、アンタ」
 それは男性特有の低音の、それでいて若そうな雰囲気の声でした。
 斜め後ろからのその声に、リレイは振り向きます。
 そこには、やはり男がいました。黒い髪に黒い瞳で肌は白めの異国の人間です。
 格好は綿生地の上下で分かれていない、腰に帯を巻いた見たことのないもの(後で知ったが、これを袴という)を着ていました。そして腰には刀を差しています。靴は、親指の所で分かれた二本指の不思議な形状をしています(これも後で知ったが、地下足袋という)。とにかく、異様な格好でした。
 ルックスは、後に町の人たちが『かっこいい』とか『婿に来ないかしら』とか言っていたのを聞きましたが、どう見ても目付きが悪くて無愛想な感じです。
「練習してるのか?」
 そいつが聞いてきます。
「うん、まあ。──てかアナタ、誰?」
 リレイが当然の質問で返します。男はあまり表情を変えず、
「ただの旅のもんだ」
 とだけ答えました。ていうか、そんなの見れば分かります。
「……浮浪者?」
「違う。……いや、まあそんなもんか」
 男は一度否定してから目線を上げて、そう答えました。
 そして浮浪者ということを認めてしまったために、これからこの男の呼称は?浮浪者?になってしまうのでした。
「浮浪者が何の用?」
 つんとした態度でリレイが聞きます。男はだから浮浪者じゃ……と言いかけましたがやめて別の話に切り替えました。
「別に用というほどのもんでもないけど、ちょっと気になったことがあってな」
「なに?」
「アンタ今、三発連続で外したろう?」
(え、最初からずっと見られてたの?)
「……回りくどいわね。なんなの、一体?」
 少しイライラし始めたリレイが睨み付けながら言うと男は、
「力入りすぎなんじゃないか?」
 心なしか控え目に、そう言いました。
「力が入りすぎ?」
 それにもう黙ってられないのはリレイです。しかし普通ならば、どう見ても銃の扱いなんて知らなそうなこの無愛想君の発言には憤慨してしまいそうな所ですが、器が大きく心も広いリレイちゃんは優しく聞き返すのでした。
 すると男はそれに気をよくしたのか、なんとなく柔らかい表情になって、
「見た感じ、肩に力が入ってる気がしてな。ピストルみたいな反動があるもんは、なんとか押さえ付けようと力を入れちまうもんだが、肩に力が入ってるとどうしてもブレが出るんだ」
 思ったより、まともなことを言いました。
「じゃあ、脱力すればいいってこと? 言っておくけど、脱力なんてしたら逆に──」
 リレイがあくまで優しい口調で言い返し始めた、その時です。
 驚きました。
 男はスッと近寄り、リレイが腰に吊るしているホルスターに手を伸ばし、あろうことかピストルを抜き取ったのです。
「えっ! なにを──!?」
 驚いたリレイは、大きな目をますます大きく見開きます。
 男は重さを確認するためかピストルをぷらぷら振ると、リレイの方に目をやって逆向きに──つまり自分自身に銃口を向けて差し出しました。
「…………」
 リレイは黙って受け取ります。
「なに?」
「いいから構えてみろよ」
 そんなやりとりの後、リレイは渋々言われた通りピストルを両手で構えました。男に向かって。
 しかしそこに男はいませんでした。別に神隠しにあった訳ではありません。どこにいたかというと、リレイの真後ろでした。
 そして、とんでもないことをするのでした。


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