投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 137 やっぱすっきゃねん! 139 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!U…D-11

〈ガンッ〉

当たったボールの衝撃で、小刻みに揺れるレフト・ポール。

(ヨシッ!)

1塁を廻った山崎は両手を〈ギュッ〉と握り締めると、ゆっくりとベースを駆けて行く。

先制ホームラン。〈ポイントゲッター〉という4番らしい働きをした山崎に、1塁スタンドは湧き上がり、3塁スタンドはどよめいた。

東海中は、動揺が修まらないまま5番の菅を迎えた。ピッチャーはカーブを投げた。

菅は待っていた。
信也と同様に右足を踏み出し、左手で強く押し込むバッティングで、センター左へ抜けるヒットとなった。

再び歓声が湧き上がる青葉中ベンチと1塁スタンド。

「ヨシッ!一気に行こう」

永井がベンチからサインを送る。
ランナー菅と、1塁コーチ湯田がサインに頷き、ヘルメットのツバを触った。
6番の長岡も、永井を見つめて打席に入った。

ピッチャーがセットポジションに入る。菅はゆっくりと塁を離れた。

その距離、約3メートル。
牽制でも、頭から帰れる位置。

ピッチャーはセットでホームを見つめた後、素早く向き直り、牽制球を投げた。菅は動きを察知して、余裕でベースに戻る。

ファーストからの返球を、苦い顔で受け取るピッチャー。明らかに苛立っている。

再び塁を離れる菅。
今度は、その動きをジッと見つめている。

瞬間、ピッチャーの首がホームを向き、右足が浮いた。

(いまっ!)

菅は深く曲げた左足を強く伸ばし、スパイクで土を咬むと素早く蹴った。
ボールは外の真っ直ぐ。
長岡は引き付けて強く流し打った。

打球は右を抜ける。2塁手前で、菅は3塁コーチの仲谷を見た。
仲谷は腕をぐるぐる回している。
菅はベースを踏み場にして、さらにスピードを上げた。

ライトからダイレクトで返球される。〈滑れ!〉と仲谷が叫んだ。

菅は頭から突っ込んだ。
サードが捕球してタッチする。
菅の右手がベースに触れた。
サードがグラブを上げて、審判にアピールする。

一瞬の静寂。

「セーフ!セーフ!」


審判の手が横に振られた。

「ヨッシャッ!」

菅は立ち上がり、ユニフォームについたドロをはたき落とす。
その笑った顔もホコリだらけだ。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 137 やっぱすっきゃねん! 139 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前