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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!U…D-10

「…やはり持たんか」

東海中の監督 竹原は、1塁ベンチで独り言のように呟くと、そばに座るエースピッチャーである宮津を呼んだ。

「すぐに準備しろ」

予定より早い指示に、宮津は困惑した顔で、

「…も、もう、ですか…?」

「…ああ…おそらく持たんな」

竹原に言われて、宮津はブルペンへと向かった。




1回裏。
マウンドで躍動する信也の姿を、3塁スタンドで見つめる尚美。
試合前の惚けた顔は消えていた。
信也が打った時、佳代や有理も叫んでいたが、彼女はひと際大きな声で、

〈行け!行けぇぇ!走れぇー!〉

と、叫んでいたが、レフトのファインプレイを見た途端に、

〈ああっ!惜っし〜い…〉

と、嘆息の声を漏らして席に着いた。その目は、期待と不安を入り交じっていた。

尚美の変わり様に、佳代と有理はお互い向き合う。すると、嬉しさから自然と笑みがこぼれた。




マウンドの信也は堂々たるものだった。東海中の3人のバッターを、凡打に斬って取った。

彼は余力を残して投げていた。
この試合、ひとりで投げ抜くつもりだった。


2回表。
青葉中は、早くもベンチ前で円陣を組んだ。

「カーブを狙え。反対方向を意識して打て」

永井が指示を出す。

円陣が解かれ、山崎が打席に向かう。素手にバットを持ち、両手首にはバンテージを巻いている。

いつものスタンスで重心を右足に置いて、バットのグリップエンドに小指を掛ける。

ピッチャーが1球目を投げた。
意表をついたど真ん中のストレート。

山崎は反応を見せず見送ると、打席を外してひと振りする。重心が先端に近いトップバランスのバットを、前よりも軸で振れるようになっていた。

ピッチャーが2球目を投げた。
狙いのスローカーブ。
山崎はステップした左足を外に開き、足元へ食い込んでくるボールをゴルフスィングのように、バットの先でボールの下を叩いた。

〈キンッ〉

打球は高く舞った。
レフトはゆっくりとバックする。

(…行け、行け…)

山崎は1塁へ走りながら、打球の行方を目で追う。

レフトはさらに下がる。フェンスが迫って来る。
フェンスに手を掛け、顔は上空を見つめたままだ。


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