投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『Sweet Kiss』
【学園物 官能小説】

『Sweet Kiss』の最初へ 『Sweet Kiss』 0 『Sweet Kiss』 2 『Sweet Kiss』の最後へ

『Sweet Kiss』-1

「よし、こっちの部屋はこんなもんでいっかー」
私は軽く手を洗うと、そう言った。
「かなり片付いたよね。お疲れ様、香織」
「お疲れー」
同じ写真部員の美咲と絵里が笑いかける。
まだ真夏ではないとはいえ、ちょっと動くと制服のシャツが肌にはりつく。
パタパタとシャツをつまんで風を送りながら、部室の中を見回す。
写真部の部室は暗室とフリースペースに分かれている。ごちゃごちゃと埃が積もっていたフリースペースは、女子部員三人の手によってすっきりとキレイになってた。
「後は暗室とこのアルバムだけだね」
「残すモノ選んで整理しないと」
パラパラとアルバムをめくると、埃が舞い上がり、美咲が軽く咳込む。
「あー、ちょっと待ってて」
私はそう言うと部室を出た。
部室前の廊下では掃除のために出された男子部員数名がたまっていた。
「あ、アネゴ、掃除終わった〜?」
「誰がアネゴよ。誰が」
軽くけとばすフリをしておいて、私はにっこり笑った。
「ちょっと頼みがあるんだけど」
すかさず逃げようとした男子のシャツの裾を掴んだ。
「何で逃げるかな?祐介君」
「いや、ほら、イヤな予感というか……」
「大したコトじゃなくて、中にあるアルバムを廊下に出して整理して欲しいだけだから」
他の男子部員にもうながす。
「それだけでいいんだったら……」
しぶしぶといった感じで部室に入る男子たち。
「おー、すっげぇキレイになってない?さすが女子が二人いると違うな」
「祐介、アンタさっきからケンカ売ってんの?何で女子が二人なのよ」
その様子を見ていた美咲が笑いながら言う。
「私たちは手伝ったダケで、ほとんど香織がやってくれたのよ」
それを聞いた祐介は、私の顔をじっと見て、しみじみ言った。
「アネゴじゃなくてお袋だったか……」
思わず手に持っていたアルバムを祐介の脇腹に突き刺す。
「ぐっ……」
一名撃沈。
「バカなコト言ってないで、運んで」
確かに私はアネゴ肌だ。
絵里みたいにきゃぴきゃぴと女の子らしくないし、ましてや美咲みたいにおとなしくない。(美咲は何があったのか言わないケド、最近、ぐんと色っぽくなった。)
だけど、好きな人に女の子扱いされないってのはちょっとツラい。
何かとつっかかってくる祐介もいけないんだと勝手に責任転嫁。
祐介との会話はお互いにぽんぽんとモノが言えて楽しいのだけど……。
「コレで全部かな?」
廊下に積み上げられたアルバムを数えながら、美咲が私に聞いてくる。
「うん、たぶん」
「きゃー、ねーねー、コレ懐かしくない!?」
既にアルバムをめくっていた絵里が示したのは私の写真だった。
唯一、私が賞を取った空の写真。
「コレって香織が賞取ったヤツだよね?」
「うん、そう。懐かしいね〜。気に入ってるから家に持って帰ろうかな」
部員全員でわいのわいのとアルバムをめくる。
そこで私はふと思い出して立ち上がる。
「どしたのー?香織」
「確か暗室にも写真が少し残ってた気がして……絵里たちは整理してて。ちょっと見てくる」
「ん、わかった〜」
一人、部室に戻り、暗室のドアを開ける。
窓一つないその部屋は薄暗く、埃っぽかった。
「あ〜ぁ、片付けるの大変だわ……」
思わず一人ごちりながら、抽出しや流しの下の戸を次々と開けていく。
「何コレ……」
写真の他に大量に出てきたのはビニ本や明らかに18禁とおぼしきマンガだった。
「……処分決定」
とりあえず、写真とソレらを机の上に積みあげる。
暗室は鍵がかかる上に、流しの下なんてほとんど開けないから、男子部員がため込んだのだろう。
結局、写真はあまりなかったが、男子がため込んだ本はかなりの冊数になった。
「よくこんなにもため込んで……」
少し好奇心でビニ本をパラパラとめくる。
同年代らしい少女が誘うような笑みを浮かべていて、ドキっとする。
慌てて閉じて、溜め息をつく。
「祐介も見てるのかなぁ……」
見てるだろうコトを頭では理解していても、全然実感はわかなかった。
今度はマンガの方を手に取ってみる。
軽い気持ちで読み始めた私は、いつの間にかイスに腰かけて、読みふけっていた。
「なぁ、アネゴ…」
半分程読んだトコロで急にドアが開く音がして、祐介が暗室に入ってきた。
私は一瞬硬直し、さりげなくマンガを閉じて机の向こうに押しやった。


『Sweet Kiss』の最初へ 『Sweet Kiss』 0 『Sweet Kiss』 2 『Sweet Kiss』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前