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君のそばにいてあげる
【学園物 恋愛小説】

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君のそばにいてあげる(二日目)-4

「よう、祐二。今日は遥奈ちゃんに抱っこしてもらっての登場か。てか、お前ってば愛されてるねー」
教室に入って最初にかけられた言葉は清十郎の一言だった。
「清……俺の表情に愛情は感じられるか?」
遥奈に抱き上げられたままの俺は清十郎をジト目で睨む。
「どっちかって言うと、母親の愛情に照れを感じて素直に喜べないお子ちゃまって感じ?」
清十郎の言葉に杏子が笑いだす。
「戸川、あんたいーこと言った。まさにそれだわ。さっき遥奈と話したんだけど、祐二ってツンデレの素質があると思わない?」
「ああ……言われてみれば確かにそんな感じだな。こいつが実年齢のナリだとちょいとウザいが今の姿なら可愛いで済ませられるよなぁ」
清十郎が笑顔で俺の頬を突きながら穏やかな表情になる。
「ちょっ、待てお前! なんだその表情は!? 人の頬を突きながらそんな変な顔をするなっ」
「あら、戸川ってばショタの気があるのかしら?」
清十郎の表情に慌てる俺とは別に杏子は横で茶々を入れてきた。
「戸川くん、ゆーくんはあげないよ。ゆーくんはあたしのものなんだから!」
遥奈よ……。
お前は何所有権を主張してんだ。
俺は誰のものでもないぞ!
「いやいや、俺はそんな微妙な趣味はないぞ。俺は真奈美が一番なんだからな。勘違いするなよ宮藤」
そうか、こいつは確か妹一筋な変態だった。
まあ、どっちに転んでも変態には変わりないけどな。
「遥奈、そろそろ俺を下ろしてくれないか。席に鞄を置きたいんだが……」
俺の言葉にようやく遥奈が俺を解放してくれた。
ようやく自由になった俺は、自分の席に鞄を置くと溜息を一つ吐くと同時に教室にみわちゃんが入ってきた。
「ほらお前ら席に着け! ホームルームを始めるぞ!」
相変わらずこの人は朝から元気だな。
「こらっ! 美作、教室に入ったら被り物は取る」
俺のニットキャップに気付いたみわちゃんはこっちに来るなりニットキャップを外しにかかる。
「いや……これだけは勘弁して下さい……」
必死に抵抗する俺にみわちゃんは引きつった笑顔を見せ始めた。
これは正直ヤバいかも……。
みわちゃんがキレたら誰も止められないぞ。
「み・ま・さ・かぁ……そこまで教師に抵抗するかぁ」
「いくらみわちゃんでもこれだけは……」
互いの手に力が入り、緊張感がピークに達しようとした時、とうとう恐れていた事態が発生した。
みわちゃんの瞳が急に潤みだしたと思った瞬間にとうとうみわちゃんは泣き出してしまった。
「うわーんっ! 美作が私の言うこと聞いてくれないよぉ! 私の指導が未熟だから美作がグレちゃったよーっ!!」
出た……。
みわちゃんの最終兵器『ガン泣き』だ。
普段は気丈なみわちゃんだが、自分の意に沿わないこととかあると泣き出し幼児退行気味になってしまうのだ。
しかも本気で……。
こうなると誰も抵抗が出来なくなってしまう。
「あーあ、みわちゃん泣かせちまったな。祐二なんとかしろよ」
ニヤニヤしながら清十郎が冷やかすと同時に、遥奈がみわちゃんを慰めに入っていた。
「みわちゃん、大丈夫だよ。ゆーくん、グレてないから」
「……本当?」
まさに母親が子供をあやす状態だった。
「ほらっ、あんたはさっさとこれを取るっ!」
遥奈とみわちゃんのやり取りを呆然と見ていた俺に杏子が近付くと問答無用とばかりにニットキャップを取る。
「みわちゃん、実はこーゆー事だったのよ」
俺のニットキャップを指でクルクル回しながら愉快そうに俺を指差す杏子。
クラスのみんなの視線が痛い。
ただでさえこのショタボディは目立つのに犬の耳まで付いているのだ。
「みわちゃんも触ってみる?」
俺の頭を撫でながら杏子はみわちゃんを呼び寄せると、その手を取り俺の頭を触らせる。
「ぐすっ……美作、これどーしたの?」
「原因は昨日と一緒ですよ」
溜息を吐きながら答える俺に対し、みわちゃんは落ち着いてきたのか笑顔を見せる。


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