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君のそばにいてあげる
【学園物 恋愛小説】

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君のそばにいてあげる(二日目)-3

これ以上、いろんな奴に寄られてたまるか。
昨日だって放課後、クラスの奴らだけじゃく噂を聞き付けた他のクラスや学年の奴らまで俺を興味津々に構っていき、珍獣扱いしてくれたんだ。
お陰で髪は撫でられまくってクシャクシャになるわ、抱き上げられ胸に顔を埋められ窒息しそうになるわで大変だったんだからな。
まあ……後の胸を押しつけられたのは男としてはラッキーなのかもしれないけど、それは俺の身体が普通の時にしてもらえたらそう思えるんだろうなあ。
などと下らない事を考えながら通学路を歩いていると、出来れば朝から会いたくない奴に出会ってしまった。
そいつの名は杏子だ……。
「あっ、遥奈おっはよー!!」
結構距離のある場所から俺達に気付いた杏子は大きな声で挨拶をすると、こっちに向かって駆け寄ってきた。
「杏子さんや。お前さんは遥奈に挨拶はするけど俺には挨拶しないのか?」
「えっ!? あーっ、祐二も居たんだぁ。いやぁ、小さいから気付かなかったよ」
笑いながら俺の頭をポンポン叩き答える杏子だけど、こいつ絶対わざとやってやがるな。
「んな訳ねーだろ! お前、どんだけ先から走ってきやがった」
「ん〜、あの時は遥奈の横にちっちゃい影が見えたのは確認してたけど、そのちっちゃい影は遥奈のもっと後ろにいると思っちゃったんだよね」
こいつ……。
「一体どんな遠近法だよっ! お前はとことん俺をおちょくる気だなっ」
「ところで、祐二はなんでこんなん被ってるの?」
俺の言葉をスルーした杏子は俺の頭からニットキャップを外す。
それと同時に茶色い犬耳がぴょこんと飛び出した。
そんな俺の姿をまじまじと見つめる杏子。
言いたい事は分かってるよ。コンチクショー。
「……ぷっ。あっははははっ! 何あんたその耳はっ!? ただでさえインパクトある格好なのに耳まで追加しちゃってさ。萌キャラ? ひょっとして萌キャラ狙ってる?」
「んな訳あるかーっ!!」
怒る俺を見兼ねたのか、遥奈が俺を後ろから抱き上げた。
「でもでも可愛いでしょ。杏子ちゃん」
「そりゃあ見た目は可愛いけど性格がねぇ」
俺を見て尚も笑う杏子。
「きっとツンデレなんだよ。ゆーくんは」
「ツンデレゆーなっ!」
遥奈に抱き上げられながらも手足をジタバタさせる俺に杏子は頭の耳を興味津々とばかりに触ってきた。
「ばかっ! やめろっ。くすぐったいだろ!」
「へえ〜、感覚はあるんだね。あっ、今ピクッてしたよ。にーさん、ここがえーんかい?」
俺の耳を容赦なくくすぐる杏子に俺は頭を振りながら必死に抵抗するのだった。
一通り俺をおちょくって満足したのか、杏子は俺を解放すると遥奈と一緒に学園に向かって歩きだす。
そんな二人の後を既に疲れ切った俺が重い足取りで歩いた。

「おはよー」
昇降口で同じクラスの女子に挨拶する遥奈と杏子を尻目に俺は昨日の放課後から暫定的に用意された脚立を使って下駄箱から上履きを取出し履き替えると、その様子を見ていた杏子が俺の頭を撫でる。
「はぁい、祐二くん。よく出来まちたねぇ」
「てめ……」
楽しそうにする杏子を俺は下から睨み上げる。
「ゆーくん、だめだよ。そんな顔しちゃ。せっかくの可愛いお顔が台無しだよ」
遥奈はそう言いながら俺を抱き上げ頬擦りをしてきた。
「ちょっ、待てっ! 遥奈っ、お前は何を考えてるんだよ」
俺の抵抗などないかの様に好き放題に振る舞う遥奈。
全力で抵抗するも次第に疲れが増し、最後には脱力する俺を見ていた杏子は「体力がないなぁ」などと笑いながらほざいていた。
そして朝の早い段階で体力を使い果たした俺は遥奈に抱き上げられながら教室へ向うことになった。


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