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君のそばにいてあげる
【学園物 恋愛小説】

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君のそばにいてあげる(二日目)-1

「よしよし、よく寝ておるな……」
深夜、祐二の部屋に忍び込む一つの影。
影の主は祐二の祖父『松戸幸蔵』だった。
彼はベッドで寝ている祐二の小さい鼻を摘む。
「ううん……」
息苦しくなった祐二は顔をしかめながら口を開くと幸蔵は待ってましたとばかりに彼の口の中に数滴の液体を垂らした。
「これでよし。さて、結果は朝の楽しみじゃわい」
小声で呟きながら幸蔵は満足そうな顔で祐二の部屋を出ていった。

そして向えた朝……。
祐二の悲鳴の様な大声で一日が始まった。

「な、な……なんだよこりゃ……」
洗面所の鏡を見た俺は思わず呆然と立ち尽くす。
鏡には小さくなってしまった俺の姿……。
まあ、これはしょうがない。
小さくなった俺の姿は夢でも幻でもない事は昨日のうちに散々認識させられたからな。
しかし、今の問題は今現在、小さくなった俺の頭にある小さくて茶色い二つの三角形の存在だ。
これってどう見ても犬の耳だよなぁ……。
恐る恐る頭上の犬耳に触れてみるとピクッ動いた!?
しかも、触った瞬間に触覚も伝わってきた。
更に俺のお尻の辺りに違和感があったので手を回してみると、尻尾が生えていやがった……。

あー、もう、分かっているよ。
分かっているともさ……。
俺の姿がこんな風になった原因なんて。
俺は洗面所を駆け出るとリビングに向かった。
バタンッ!!
「爺ぃ! これは一体何なんだよっ!!」
勢い良くリビングのドアを開けた俺は頭の上に乗っている犬耳を指差しながら、ソファーてお茶を啜っている爺さんに怒鳴った。
「おお、祐二か。朝から元気なのは結構だが、挨拶にしてはちと乱暴すぎんか」
飄々とした様子で答える爺さんは俺の姿をまじまじと見つめる。
「ほほう……これは面妖な姿になったものじゃのう」
「他人事みたいにしてんじゃねーよ……。これは一体何のマネだよ」
「なぁに、お前さんの身体を元に戻す為の薬を調合していてな。とりあえず試作品が出来たから試してみただけじゃ」
眉間に皺を寄せ睨む俺に対し、俺の姿を見て笑う爺さん。
しかし、爺さんは面白そうにしながらも更に言葉を続ける。
「まあ、安心せい。この薬は儂がキチンと調合をメモして作った物じゃから今日の夜までに中和剤を作ってその耳と尻尾は消してやる」
「……マジで頼むよ爺さん。これ以上変な姿にされたら俺はもう堪えられないよ」
困った顔をする俺を見て、爺さんは「まかせんかいっ!」と胸を張る。
すると、今度はキッチンの方から声が聞こえてきた。「あらあら、今度は更に可愛くなっちゃったわねぇ。母さん困っちゃうわ」
俺の姿……。
小さな姿だけでなく犬耳と尻尾を着けた俺を見た母さんはそれはもう嬉しそうだった。
「……いや、困ってないないでしょ。実際、とても嬉しそうだよ」
「ええ。自分の息子が更に可愛くなって嬉しすぎて困っちゃうわ」
母さんの言葉に盛大な溜息を吐いた俺は父さんがいない事に気付き、母さんに聞くと「学会の発表会があるから朝早くから出かけたわよ」との事だった。
我が家では比較的常識人である父さんがいないのは少々困るがしょうがないか。
因みに、父さんが比較的常識人というのはあくまで『我が家』限定であり、世間一般ではやはり変り者の類かもしれない。

そして、俺はパジャマ姿のまま母さんの用意してくれた朝食を食べている間、母さんは俺の制服のズボンを持ってきて何やら細工をしていると家の呼び鈴が鳴り、ズボンの細工を終えた母さんが玄関に向かった。


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