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不確かなモノ
【大人 恋愛小説】

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確かなモノ-4

「李鈴さん、着きましたよ。起きてください」
「うぅん…もぉ着いたのぉ?」
肩を揺すると、李鈴は目を擦りながら軽く伸びをした。
「なんか今日は、李鈴…疲れちゃったなぁ……」
それは貴方が、楽屋で男とイチャイチャしていたからでしょう?
「倫クンがチューしてくれたら、元気が出るのになぁ…最近の倫クン、チューすらしてくれないから、李鈴寂しい」
……そう来ましたか。
「あのねぇ、李鈴さん……」
言い終わるよりも先に、李鈴が僕の唇を塞ぐ。
慌てて剥がそうとしたけれど、時既に遅し…車の外で、瞬く間にフラッシュが焚かれた。
迂濶だった。
不意打ちとはいえ、こんな人目につく場所でキスを許してしまうとは……

「李鈴さん、貴方は先に行っててください」
「で、でもぉ…」
「良いですね。車を出たら、記者に捕まらない様に走るんですよ?」
「う、うん」
「さぁ、行ってください。早く!」
僕の声とほぼ同時に、李鈴が車から降りて走って行く。
スタジオの中に無事に入ったのを確認してから、僕はゆっくりと車を降りた。

「霜村 倫太郎さんですね?小牧 李鈴さんとの関係について、少し話を聞かせて貰えませんか?」
記者がここぞとばかりに近寄って来る。
さて、この状況…どうしましょうか?
この記者、如何にもしつこそうですしねぇ……


「おっ、倫がいるなんて珍しい!今日は、随分と懐かしい顔に会うなぁ……」
久しぶりに参加した、高校時代の仲間との飲み会…遅れて来た友人が、僕の顔を見るなり言った。
「ちょうど良いや。俺、お前に訊きたい事が有ったんだよ」
そいつは週刊誌を開いて、僕の目の前に置く。
「なぁ、倫…これってお前だよなぁ?マネージャーやってんのは知ってたけど、まさか小牧 李鈴のだったとは……」
その週刊誌には、先日撮られた写真が大きく掲載されている。
スキャンダル自体はプロダクションが上手く誤魔化したが、見る人が見れば、その写真に写っているのが彼女のマネージャーである僕だと分かってしまうだろう。

「お前、こんな所で飲んでて良いのか?会社、クビになったりするんじゃねぇの?」
「大丈夫だから来たんですよ。生憎、担当を外されただけでクビにはなりませんでしたから」
僕としては、会社をクビになっても構わなかった。今の仕事に『愛着』は有っても、『執着』は無い。

「でもよぉ、小牧 李鈴と離れて寂しくねぇの?一応お前ら、付き合ってたんだろ?」
「いえ、全然。彼女に対して、仕事のパートナーとしての『愛着』は多少なりとも有りましたが、それだけですから」
仕事への想いと同じ…李鈴に対しても、『愛着』は有っても『執着』は無かった。無くしたらそれまでで、諦めがつく。
別に李鈴でなくても構わない。
「お前って、相変わらずドライだなぁ……いつか女に刺されるぞ?」
友人は、苦笑している。そして、急に何かを思い出したかの様に手を叩くと、また口を開いた。


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