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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Dawn-4

「戦うったって…。」

大和はなおも食い下がる。

「もういい、わたしが借りる。来い!」

細い腕からは想像も付かないほどの力で運転席から持ち上げられ、道路に放り出される。もうこのときには、大和の頭の中には自分をタクシーの運転手代わりに使う女達のことも、自分が引き起こしている渋滞のことも頭になかった。この事態が正常であるかさえ、考える余裕はなかった。

「お、おい…!」

大和が追いつく前に、女はカップルからバイクを(どうみても)強奪した。逃げるように道路から遠ざかるカップルを尻目に、大和がバイクにまたがった。

「犯罪だぞ、こんなの…。」

「もう言うな。もう持ち主の匂いは覚えた。」

はぁ?何言ってんだよ、こいつ。

「動かせ!お前もあいつに食われたいか!!」

脅すような声色に、たじろぐことは無かった。もうこうなったら、という気持ちが、ほんの少しの冒険心と興奮をはらんで大和にこう言わせた。

「つかまってろ、畜生!!」

勢いよくまたがった車体が一瞬沈み、続いて小さな揺れが、女もこいつに乗り込んだことを教えた。さしっぱなしのキーをまわして、右足で大きく踏み込んでエンジンをかける。猛獣のうなり声のようなエンジンの音は、久しく聞いていなかった気に入りの音楽のように彼の心を高揚させた。

―そういえば…おれ、この瞬間が好きだったんだよな。

「しっかりつかまれ!振り落とすぞ!」

回された腕が、しっかり大和を引き寄せた。胸があたる…とか、そんな不埒なことを考える前に、アクセルを回した。



「どこへ向かえばいいんだよ!?」

エンジンの音に負けないように大声で言う。

「広ければ何処でもいい!出来るだけ遠くだ!」

返ってきた言葉は、またしても無茶な注文で…思わず文句を言いたくなったが、そんな暇は無いと思い直した。錯覚や手品の類で無いならば、大和の目にはいまだにあの怪物が見えるし、そして間違いなく追われている。そして、どうしようもなく禍々しいものだということに疑いを抱く気にもなれないほどおぞましい。

「お前の名前は!?」

他に聞きたいことがなかったわけではない。それでもなぜか気になって、大和は聞いてみた。

「おい、お前の名前…」

「人間に教える名は無い!黙って私を連れて行け!」

自称“人外”のその女は、凄い剣幕で言い返した。女に限らず、他人からそんな扱いを受けたのは初めてだった。煙草その他もろもろの非行について彼を補導した警官だって、もう少しましな扱いをした。大和は最初面食らったが、口の中で呟いた。


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