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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜
【ファンタジー 官能小説】

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DEEP DIVER玲那〜闇に沈みし者〜-4

「ほひぇへ、ひょうふぁふぁんふぉひょうはほ?」
 茶菓子を頬張り、ふがふがと頬を膨らませる玲那。黙って座っていれば髪の長い可憐な美少女なのだが、食い意地が全てを台無しにしていた。顔をしかめる天元老。葵は盛大に溜息を吐き、横に座っているダイアナは声を噛み殺して笑い出す。
「はあ、口の中に物を入れたまま喋るなよ…。と、いうより、それ以前の問題だな。まったく、意地汚いと言うか、何というか。お前は欠食児童か…」
「ひゃひひょ〜お…う、ぐへっ、ごほっ、ごほっ…」
 茶菓子を喉に詰め、慌ててお茶を啜る玲那。
「一体、何をやっているんだ。喋るんだか、食うんだか、どちらかにしろ…」
「けほ、けほ…。欠食児童って何よ。こんな可愛くて、可憐で、キュートで愛らしい天下無敵の美少女をつかまえて…。可愛いだけじゃなくてスタイル抜群、バストだってぼいんぼいんなんだから」
 葵の言葉に、眉間に小さく皺を寄せる玲那。
「太っているだけだろ。第一、天下無敵の美少女が茶菓子を口一杯に頬張ったまま喋ったり、食べ物を喉に詰めたりするもんか」
「むぁあ〜、可愛くねぇなあ、このおっさんはっ!?も〜おっ、莫迦葵っ!!」
「おっさんとはなんだっ!第一、目上の人間をつかまえて呼び捨てにするなっ!!」
「おっさんはおっさんでしょっ!二十歳過ぎればみなおっさんよっ!それとも、お兄ちゃんとでも呼んで欲しいわけ?葵ってば、変な趣味でもあるんじゃないっ!!」
「誰がそんなことを言った?俺は目上の者を呼び捨てにするなと言っているんだこの莫迦者がっ!!」
「莫迦とは何よ、この莫迦葵っ!!」
 莫迦だの何のと激しく言い合いをする葵と玲那。最早天元老人は処置無しと言った様子で肩をすくめ、その向かいではダイアナが涼しい顔でお茶を飲んでいる。その我関せずと言った泰然とした様子に、天元は思わず感心した声を漏らす。
「…だいあなさん、お前さん大物じゃのぅ」
 その天元の声が耳に届いているのかどうか、当のダイアナは湯飲みを置くと、小さく咳払いをした。
「あの、そろそろ仕事の話を進めさせてもらって良いかしら?」
 静かに、天使の微笑みを湛えてダイアナがそう告げる。その言葉で、玲那と葵は言葉を呑み込み、浮き上がっていた腰を下ろして座り直した。
「あの、あの、それで、今回の仕事の依頼って何なの?ダイアナさん」
 少し体裁の悪さを感じる玲那。しかし、当のダイアナは何事もなかったかのように話を続ける。
「少し前に私達が遭遇した神人はこれまでのどの神人とも違い、特殊なものだったの。その詳しい説明は追々するとして、その神人が身に着けいた服がとある高校の制服だったの。そこで、玲那ちゃんにはその学校に潜入してもらって、その制服の持ち主の事を調べて欲しいのよ…」
「それって、私にその高校の生徒になれって事ですか?」
 退屈な日常から離れられることに玲那は少し胸を高鳴らせた。鎮魂機関の仕事を手伝うことは学校に通うのとはまた違った楽しさを感じるのだ。勿論、命の危険に晒される事も多々あったが、それを補って余りある魅力がそこにはあった。
「見ての通り、私に高校生は無理だし、葵は生徒どころかカタギの人間にも見えないし…」
 そう言って苦笑いを見せるダイアナ。カタギには見えないと言われ、隣で葵が憮然とした声を漏らす。
「分かりました。大船に乗った気で、この玲那ちゃんにど〜んとお任せくださいっ!!へたれな神人の一匹や二匹、私がちょちょいのちょいと始末してやりますっ!!」
 どんと胸を張る玲那。しかし、葵はあまり面白そうな顔をしなかった。
「…大船じゃなくて、泥船だろう」
 呟く葵。目を吊り上げる玲那。
「な、なにをぉおおっ!!」
「と、ともかく、…」
 今にも再開しそうな口喧嘩を遮り、ダイアナが慌てて言葉を挟み込む。
「ともかく、玲那ちゃんには高校への潜入捜査をお願い。別に神人をやっつけなくていいから。神人が見つかっても一人で始末しようなんて思わないこと。捜査中は私達に定期的に連絡を入れてね。…念を押すけど、くれぐれも危ない事はしないようにね。何かあったら、私達に連絡をして」
 ダイアナの言葉が分かっているのかいないのか、嬉しそうに挙手する玲那。
「は〜い、分かってま〜す♪…うふふ、見てなさいよ、へたれ神人。この玲那様が、無間地獄へ送り返してやるわ。…うふふ、…うふ、……おほほ、…お〜〜〜ほほほほっほ♪」
 立ち上がり、胸を張り、高らかに笑う玲那。その尋常ならざる様子に、さしものダイアナも驚きの目を向け、葵と天元は盛大に溜息を吐いた。
「……全然、分かっちゃいねぇ」
 陣屋葵は小さく呟いた。


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