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Larme
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Larme-2

発売日から2日が過ぎた日、オリコンの1位の欄には、『ForDear』とあった。
2位との差は、凄かった。
INNOCENCEの名が、日本中に知れ渡った瞬間だった。
連日の耳を疑うようなニュースに、僕らは、まるで夢の中のような感覚で、テレビを眺めていた。
僕らには実感がなかった。

でも、ひとつだけ、確かな事がある。
これで、胸を張ってあずさに逢いに行ける。
気が付くと僕は、緑の窓口に駆け込んでいた。


アルバムの封を切り、中から歌詞カードを取り出す。
収録曲を指でなぞり、7番目…
『ForDear』
2つの意味で、僕の運命を変えた曲。
僕が、どんな思いでこの曲を歌ったのか、…あなたには伝わらなかったのかな?


「…え?嘘でしょ? …ねぇ、 麻梨さん!」
麻梨さんは、黙ったままで、僕と目を合わそうとしない。
「麻梨さん!」
だめだ。
…そうだ。
夏名!
僕は、見慣れた街を走った。
夏名が、…双子の姉が居るはずの我が家に向かって。

――数時間前。
僕は、8年ぶりに青森に帰って来た。
上京する時に、彼女と交した約束を守る為に。
彼女の家を尋ねたが、留守だったので、仕方なく哲明の姉、麻梨さんの喫茶店に行った。
…そこで僕が聞かされたのは、受け入れ難い運命だった。
信じられない、信じない、信じたくない。
「夏名っ!」
乱暴にドアを開け、僕は叫ぶ。
「夏名、嘘だよね?…ねぇ、夏名!夏名ぁ!」
夏名は、何も言わず、下を向いていた。
僕は夏名にしがみつき、泣いた。
「何か言ってよ…夏名!」
夏名の目からも、涙が流れていた。
…これが、現実なんだ。

僕は、病院に向かい走った。
個室のドアを開けると、そこには、まるで別人のような彼女がいた。
…僕とあなたは、あと、どれくらい一緒に居れるのかな?


吹雪がおさまると、僕は、煙草をくわえ、火をつけた。
あの時、一緒に東京に行こうと言ったけれど、最後まで彼女は首を縦に振らなかった。
今でも、それがなぜなのか、僕にはわからない。
…また涙がにじんできた。
気付くと僕は、『ForDear』を口ずさんでいた。


「また、すぐ来るから」
僕は、果たせもしない約束をし、故郷を後にした。
東京に戻った僕は、毎日仕事に追われた。
テレビに出て、ラジオに出て、雑誌のインタビューに答え、レコーディングをし、ライヴの合間に曲を書いた。
…でも、時間なんて本気で作ろうと思えば、いつでも、いくらでも作れたはずなんだ。
結局、僕は彼女より仕事を選んだ。
彼女の元には戻らなかった。
『戻れなかった』んじゃない。
『戻らなかった』んだ。
そんなある日だった。
音楽番組の収録が終わり、携帯を見ると、夏名から電話が来ていた。
まさかと思い、慌ててかけなおすと、やっぱり内容は、『あずさが危ないからすぐに帰って来い』だった。
僕は、すぐにでも逢いに行きたかったけど、もう1人の僕が囁く。
“INNOCENCEのリーダー、として仕事を投げれない。
テレビやラジオに穴は開けれない。
ライヴツアーも入っている。
何より、ファンが待っている。”
僕は、夏名に怒鳴られても、帰るとは言わなかった。
心配じゃない訳じゃない。
心配じゃない筈がない。
でも、僕は、帰らなかった。
仕事中も、あずさの事が気になって仕方なかった。
でも、僕は、帰らなかった。
病に苦しむ彼女の元へ帰らなかった。
…あの時夏名は、電話の向こうで泣いていた。


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