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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?3〜堂々巡りと結論情事?〜-2

「あ…健介か」
「健介か、じゃねぇっ」
間の抜けた返事に、声の主――健介が脱力する。
「ここんとこずっとぼぅっとしてんじゃねえか」
言いながら誠司の頭を捕まえると、わしゃわしゃと髪を乱す。彼の表情には、不安らしきものがちらついている。
「…そんなんで課長就任、大丈夫かよ?」

玲の告白の翌日、誠司は正式に辞令を出された。内容は「営業部・営業一課の課長職就任」。そして当日就任ではなく、辞令から七日後の就任。
急な昇進や降格、異動が非常に多いKIRISAカンパニーでは「七日後の就任」という内容はさして珍しいものではなかったが、流石に今回の「誠司の課長就任」は営業一課に限り、驚きと喜びを生んだ。何せ、半年前からの働きかけが、誠司の課長就任という予想外の実を結んだのだ。
だが当然、突然の課長就任に驚きはする。しかし彼らも、「適材適所」を社訓とするKIRISAWAカンパニーの社員。最終的には大した反発をする事なく、「誠司は上司として相応しい人間になれる」と納得し、期待し始めた。

――故に、辞令以降ぼんやりしている誠司を見ると、少なからぬ不安にかられるのだ。

「…就任の方は大丈夫だよ。そっちの心構えはできてるし」
だが誠司は、就任についての不安は全くない。むしろ、下準備を済ませた事もあってか、大いに自信を持っている。
「……就任の方は、ねぇ…」
そして健介は、言葉から人の心情を読み取るのが何故か上手い。それは誠司も例外ではなく、彼は誠司の言葉から、昇進に対する自信を読み取った。
「…つまり、別の事で悩んでるって事か」
――同時に、誠司の悩みが個人的な所にある事も。
「…まあ、ね」
「そんなに悩むんだったら、誰かに相談…って感じじゃなさそうだしな…」
そう言って、苦虫を噛み潰したような顔をする健介。どうやら彼は、悩みの重さについても感づいたらしい。
「第一、この五日間ずっと悩んでるんだろ?それなのにお前から相談受けたって話、誰からも聞かねえからな…」
「まぁ…実際、人に相談するのが難しい問題だから…」
誠司は苦笑する。
「…なら俺に相談、ってのも難しいか」
すると誠司につられたのか、健介も苦笑した。誠司は彼が言った言葉に反応して、健介をまじまじと見てみる。
「………どのみち、お前の場合はろくな答えが返ってきそうにない」
そしてすぐに、健介の場合は論外であるという結論に至る。
「ひっでぇ」
「自分でもわかってんだろ?相談役になれるような奴じゃないって」
「そりゃそうだけどよ…」
健介はがっくりと肩を落とす。その落胆ぶりとは対照的に、誠司の方は少し面白そうだ。どうやら、少し滑稽に見えたらしい。
――そのせいだろうか。

「それに、健介なら『男の甲斐性だ』とか言いそ…っ」

調子に乗って更に健介を困らせようとして、うっかり口を滑らせてしまった。慌てて口を押さえるが、出てしまった言葉はもう戻らない。当然それは、健介の耳にしっかり入ってしまった。
しかも健介は、変に勘が鋭い。故に、中途で途切れた言葉でも、内容によってはその全体像を把握できる。
「…ははぁん、俺が『男の甲斐性』なんて答えをする内容かぁ……」
落胆の表情が一変して、変にもったいぶった態度をとり始める健介。
「つまり……色恋沙汰だな?」
そして今までの例に漏れず、誠司の悩みをずばりと言い当ててみせた。
「……」
対して誠司は、黙したまま語ろうとしない。
――否。
語れない、といった方が良いだろうか。ずばりと言い当てられ、二重三重の意味で閉口してしまったのだ。
その閉口を、どうやら健介は都合良く解釈したらしい。「そうかぁ…色恋沙汰かぁ…」と感慨深げに頷きながら、満足げな笑みを浮かべている。その笑みを見て誠司は内心、しまった、と臍を噛んだ。


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