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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第19章-10

「何故…」

言いかける風炎をギラ、と睨んで、

「馬鹿!」

と言い放つと、彼女は迷わず獄のほうに向かった。奴が取り落とした刀を迷わず手にとって、その切っ先よりよほど鋭い眼でかける先にあるものを見据えた。

「茜―!!」





黷は二人の下へゆっくり近づいていった。堅く抱き合う二人は、そんな黷の言葉の全てを聞き、全ての動きを見ていた。

「 許さぬぞ いぬ共 今ここで 」

 今ここで、殺してやると、告げようとした黷の声は、突如現れたまばゆい閃光によって遮られた。

「  !?  」



その光は、空気を満たす呪いを一掃し、草たちを新鮮な風で揺らし、空を覆う雲でさえ晴れ渡らせた。その光は、祝福にして承認。月明かりにして曙光だった。

「こ…これ…!?」

抱き合った二人の腕の中に、

いま、そこには伝説の長柄があった。

まっすぐ伸びた刃は白金の光を湛えた、美しの霊槍。全ての生命の祝福を受けて、全ての生命に祝福を与える、その槍は…



――言祝(ことほ)ぎ申し上げる、我が主。

 主はようやく、我を振るう資格を得た。

 

愛せよ!雨の命を潤すが如くに!



我が名は――



「…雨垂(うたり)…!」

二人の間に、言葉は要らなかった。今、伝承はあらためてその伝えるところの正しさを証明し、妻を、何よりも妻を愛する、一人の男のもとに聖なる槍をもたらした。飃が手に取った瞬間、全ての恐れも消えた。



「黷!覚悟!!」

一歩踏み出した彼の衝きは…



危険を察知して身体を霧へと変化させて逃がれようとする黷の左腕を捕らえ…一瞬で片腕を灰にした。


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