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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第19章-11

「 お の れ   口 惜 し や 犲ど も! ! 必 ず 吾 が 殺 し て や る ・・・ ! ! !」



黷は怒号の余韻だけを残し…巻き上げた砂塵と共に瞬く間に空へと消えてしまった。

後に残ったのは、うそみたいな静寂だけ。嘘みたいな平和が、朝の光に暖められていた。



辺りを見回したさくらの目に入ったのは、地面からもうもうと立ち上る煙と、その前に立ち尽くす茜の姿。そして、よろめきながら風炎が立ち上がり…



茜が地面にくず折れた。



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綺麗な建物だった。

あの薄汚れた病院を見た後だから余計にそうおもうのだろうけど、綺麗過ぎるほど綺麗だった。

ICUに収容される患者との面会時間は限られていて、人数も1人までと決まっていた。ICUと呼ばれる集中治療室には三つのベッドが並んでいて、そのどれもに大きな酸素のボンベと、何か私には名前も解らない沢山の薬を投与するためのチューブがぶらさがっていた。

茜は、そのベッドの一番廊下側に眠っていた。今は傍らに風炎がついている。何をするでもなく、彼は茜の手を握っていた。

一週間もしないうちに、一般病棟へ移っていただけるでしょう、と、彼女の治療を担当した医師は言った。全員が血まみれで、全員が今にも死にそうな表情をしていた。風炎を含め、私たち三人とも診察を受けるように進められたけど、深く追求されるのが嫌で断った。飃や風炎の傷はすぐに治ってしまうし、私には傷と言う傷も無い。特に、飃の傷は鞭打たれて出来た特殊なものだから、医師が見たら警察に連絡が行くかもしれない。そこで拘束されることを思うと、少しくらい痛くても我慢したいと言うのが二人の言い分だった。

風炎は茜についていてあげたかったし、飃は私と離れたくなかったから。



茜は、風炎を殺そうと刀を上げた獄に勇敢にも体当たりをした。刀を奪って、あと一歩で相手の間合いに入ると言う時に、獄の転がって横たわっていた地面から煙が上がったのだ。風炎の視界が回復する前に、獄の姿は消え、茜が膝を突いた。

茜は前方の、おそらくは煙の中に居た何者かが放った斬激によって、内臓に達するほどの深い傷を受けた。すぐさま茜を抱えて病院に向かった風炎のあとを追って、私たちもここにたどり着いたというわけだった。

茜の手術は二時間にもおよび、間に私は風炎から事の顛末を聞いた。獄が、私の体を用いて子供を産ませ、新たなる種の誕生を画策していたこと。茜は、私と友人になるべくして友人になり、澱みのメンバーとして道具のように扱われていたということ。

―そして、風炎が彼女を解放し、自らも澱みに反旗を掲げるに至った経緯にいたるまで。

「彼女は…行き倒れた子供のようなものだ。」

風炎は、ぽつりと言った。


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