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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第18章-13

「あなたを探していたら、神立があなたのところに案内してくれました…しかし、あれは消えてしまった。誰かが神立の幻を使ってあなたを誘導しようとしたようです。」

そして、言葉を切って私に聞いた。

「あなたは全て聞いてしまった…行くのですね。」

「ええ。」

私は答えた。彼女は、首を振って笑った。かすかな振動が私の身体に伝わってくる。

「誰が見てもこの結末は予想できたのに…あいつはやはり抜けている。」

まったくだ。私は思った。

「飃のことを想う時のあなたの力には目を見張るものがあります。今度のこともそうですが…」

彼女は、およそ人間の目では終えないスピードで、次々と屋根の上を飛び越えていた。私が無事でいられるのは、彼女が小さな結界を張ってくれているからだ。



私は、今は自分の中で大人しくしているあなじに、半ば感謝しながら思った。

あなじに心を奪われないように、私が巧く立ち回って全員を助けてあげればいいのだ。でも、そんな簡単な結論は、実現が最も困難な世迷言だと…あなじは囁いた。



東に向かう私たちとは逆に、夜は急速に私たちとは反対方向に流れていった。時計の針の歩みが私を追い詰めてゆくのを見るのが嫌で、時計も、携帯も全て自宅においてきた。たとえ気休めに過ぎないと解っていても、私の元を去っていく時が、せめて飃の生きる空間では少しでも長く留まってくれたらいいと思わずにはいられなかった。

雨は勢いを弱め、いちいち目をこすらなくても前が見えるようになった。

神立…いや、神立の幻は、一体何をさせたかったのだろう。そして、何をしたかったのだろうか。あの目は、私を観察し、そして…試しているように見えた。

そして、試している当の本人に、確かに迷いがあったようにも。



「見えた!あの山だ!」

ネオン輝く街の、光の海の中に孤島のようにその山はあった。こんなに沢山の人がいるのに…だれもあの山で行われようとしているおぞましいことに気づかない…

「間に合う…かな…」

口にしかけた疑問は、背筋を駆け上る悪寒に遮られた。

いる。近くに澱みが!

向こうもこっちを見つけてる…

私は辺りを見回した。

高層ビルのジャングルの中に、点滅する光の波。そのなかでも、航空障害灯の赤い点滅が私の注意を引いた。


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