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『彼方から……』
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『彼方から……』-6

(見て来ましたか?)

再び声が聞こえて気付くと、俺はまたあの白い空間にいた。

「見て来たか…だと?テメェも案外、腐ってやがるんだな……」

(どういう意味ですか?)

「自分が助けた女が自殺を決意する姿を見せる為に俺を下に降ろしたのか?お前のやったコトは無意味で無駄だと教える為に……」

(そんなつもりはありません。彼女があなたの存在に気付いたのは計算外でしたが……)

「人間は、あんたの計算通りに動いてる訳じゃない!あいつは勘違いして自殺を決意しちまった。どうすればいいんだよ……」

焦り、苛立ち、襲って来る恐怖感……為す術の無い状況に俺は頭を抱えていた。

(ならば、あなたが助けに行きますか?)

唐突な声の提案に俺は呆けた様に顔を上げる。

「そんなコトが出来るのか?」

(あなたに二つの選択肢を与えます。このまま上にあがるか条件付きで彼女の許へ行った後に地獄へ堕ちるか……克樹、あなたに問います。どちらを選びますか?)

「俺を美宇の傍に行かせてくれ!!」

(条件はあなたにとって辛い事ですよ?また、彼女の許に行けたとしても必ず助けられるとは限らない。それでもそちらを選択するのですか?)

「あいつは……美宇は俺が必ず助けてみせる!!どうせ天国に行けるなんて思っちゃいない。早く条件を言ってくれ!そして美宇の許に行かせてくれ!!」

そこで声は沈黙した。しばらくの間を開けて再び言葉を紡ぐ。

(条件は二つ……。一つは時間。あなたが死んだ時から四十九日がタイムリミットです。今現在三日経ったので残りは四十六日間。そしてもう一つは仮りそめの肉体はあなた本人ではなく別人です。けれど、彼女に決してあなたの正体を明かさぬ事……もしばれてしまったら、タイムリミットを待たずしてあなたは地獄行きになります。)

声から突き付けられた条件は難しいものだった。

別人のまま正体を明かさずに自殺を思い留まらせる?そんなコト出来るのか?

しかし、俺に逡巡している暇はない。この条件を飲まない限り美宇の許へ行く事など出来ないのだから……

「わかった、その条件を飲もう。だけど教えてくれないか?何故正体を明かしてはいけないんだ?」

(それは仮りそめとはいえ、死した魂に再び肉体を与える事など本来は犯してはならない禁忌。まして下界の者に知られてしまうなどあってはならないのです。敢えてその禁忌を犯すならあなたは地獄行きになる。例えその理由がなんであったとしても……)

「なるほど、規律を破れば地獄行きか……だが何故あんたは手を貸すんだ?」

犯してはならない禁忌なら、そもそも手を貸す事さえあってはならない筈。
つまりこの選択肢すら有り得ないって事だ。

(克樹、あなたは言いました。もし再び目の前で同じ事が起きたなら、やはり同じ行動を取ると……。何度でも彼女を助ける、それが人間なんだと……。私は確かめたいのです。あなたの言葉が真実なのかどうか。さあ、あなたに残された時間は少ない。お行きなさい、よい結果が出る事を私も祈りましょう。未来は私にすらわからないのですから……)

その言葉を最後に俺の意識は再び遠退いていった。

美宇、待っていろ。お前を死なせやしない……

見せてやるよ俺の根性を

命を……かけて……


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