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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第17章-10

「また、お前か…。」

見えない相手に文句を言う。ここのところ、自分のなすこと全てがその匂いの主とその女に関係しているように思える。それほど、あの二人の存在は重要だということなのだろうが…。

―これは獄に報告すべきか…

探屋は迷った。

―いや。よそう。あいつに話すと話がこじれる。面白い展開にはなるかもしれないが。

「せいぜい上手く立ち回るんだな…飃。」



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もはや、「それ」には人の面影の気配もなかった。



日本人に、一番馴染み深い妖怪といったら、何を思い浮かべるだろう?

夕暮れ時、真っ暗になるまで夢中で遊んだ、沢山の遊びの中の一つ。

じゃんけんで負けたら、目を閉じて十数える。

追いかけて、追いかけて…

それでも、捕まえられなかったら、その人は?捕まえる相手が、みな、逃げおおせてしまったら?

答えは目の前にあった。妄執の果てに、醜い妖怪に姿を変えた悲しい人間…“彼”の太い腕は鎖につながれ、強い封印によって本来の怪力を発揮することが出来ないようにしてあった。長い角は天井をこすろうかというほど伸び、その下の顔は血のように赤く、目は炯炯と燃えていた。鋭い牙が、閉じた口の隙間から飛び出て、食らうべき者を待ちわびる門のようにも見えた。



ここは、とあるビルの、地下に設けられた一室。厳重な防音措置と、破魔の術とで覆われたこの部屋は、ただこの妖怪をかくまうためにだけ作られたものだ。

薄暗い部屋には、簡素な机と椅子以外は何も無い。“彼”にはもはや必要の無いものだから。

“彼”が望むのは、たった一人の人間。もはや会話能力すら著しく衰え、簡単な単語と身振り手振りでしか自らの意思を伝えることしか出来ない。



「カジマヤ…何か話したか?」

部屋に入るなり、コートを脱いで椅子に放る。その動作が普段に飃に比べて投げやりなように思えて、カジマヤは耳の3分の1を失う覚悟を決めた。

「悪いことをしてるわけじゃない…それくらいしか言ってないよ…」

飃は少し可笑しそうに、笑い声聞こえなくも無い音を立てて首を振る。


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