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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第15章-2

「その腕輪…どうしたの?」

「うん?これか?これは……」

言葉につまる。しばらく腕輪を見て考え込む飃の顔を、見慣れない表情がよぎる。

困惑だ。

「何故だろう。覚えが無い。」

「飃がそれをしてるの、初めて見た…てゆうかそれ、お母さんに私があげたのと同じ腕輪みたい…。」

はっと立ち上がって、机の引き出しを見る。正確には、その引き出しの奥の奥。鍵を掛けてある宝箱の中。そこには私が書き溜めたどうしようもない小説や日記があって、そして…

「無い…。」

愕然とする。

「本当に覚えが無いの?」

「ああ…」

私たち二人とも、困惑した。こんなことが起こるなんて、ありえない。飃の腕輪を手に取ってよく見る…

確かに、母の名前が彫ってある。木で作った腕輪で、稚拙な模様が彫ってある。これは世界にひとつしか無い腕輪…だってこれは、私が図工の時間に作ったもの。それを母にあげたんだ…。でも、鍵は私の携帯にくっついてるし、飃がわざわざ私の母の形見を盗むはず無いし…。



「いったい…?」



その時…奇妙な感覚が襲った。空間のゆがみに、自分の肉体ごとはさまって、大きな圧力で捻じ曲げられるような。

「あぁ…あ!」

細胞が一度完全にばらばらになって…私の周りの空間でかき混ぜられ……それを体験するのはひどい苦痛だった。十数年、私が生きてきた上で体験した全てのことを、誰か見ず知らずの者に覗かれて、好き勝手に弄(いじ)られて…まったく別々の場所に動かされてしまう…確かにそういう感覚だった。沢山の手に捕まれ、引っ張られ、広げられて、また沢山の手が私をぎゅうぎゅうと押さえつけて…





一瞬後、すべては元通りになった。

「・・・あれ?」



そして、いつもどおりの自分の家、いつもどおりのリビングルーム。私は床の上にひざをついて、母の形見を握ったまま呆然と辺りを見回した。

どこを見ても…そこに飃の姿は無かった。


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