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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The Hint Of The Storm-1

子供の頃の記憶は…無い。
覚えているのは…血と…鉄と排泄物の…むせ返るような臭い…
鉄のビーズの付いた鞭で、的一つ外す度に、十回。三回目に皮膚が裂け、五回目で血が噴き出し…幸運なら、七回目を受ける頃には、気を失っている。




「…しばらくこの家にいるがいい。」

飃という狗族の代役として長を務めるイナサという女性は、僕を村に迎え入れ、自分の家で寝泊りさせるにあたってこう言った。

「お前の素性はこの村の狗族にには伝えていない。飃の意図したことが何にしろ、まずは狗族としての自覚を持たせるためにここでの生活に順応してもらおうと思う。自分が何者か、理解できた時に、この後どうするか決めるがいい。それまではこの村を一歩も出さぬからな。」





「ナナ〜っ!」
また、いつもの呼び声。川原の石を蹴りあげながら、あの子がやってくる。聞こえているけど、近くに来るまで気付かないフリ。
「若葉…」
だって、あまりに長く見つめていると、苦しくなってしまうから。
「また独りで考え事?母さんがね、手伝って欲しいって!」
「うん…今行く…。」
ありがとう!と、彼女は走って行ってしまった。どうして彼女はあんな顔で笑えるんだろう。




若葉のお母さんは、身重で夫を失った。そんな彼女の手伝いをするのが、僕の日課の一つ。



「おばさん、来ました。」

「ああ!助かった!ここの畑のね、大根のよさそうなのを採っておいてくれるかい。」

大根の収穫時期を見分ける能力は身につけた。カボチャや、ジャガイモやゴボウも。



それでも、あの飃という狗族が、どうして自分を殺さずにこんなところに送ったのかは解らなかった。野菜の収穫時期を教えるため…じゃないことは確かだ。

敵は殺す…自分に刃を向けたものは殺す…それがこの世の掟だと、あのヒトは言っていた。

『やられたらやりかえす…それが当たり前だァ。お前は死にてえか?なら殺せ。殺されるほうになるんじゃねえ。やり返される前に殺して、殺して、殺して…』



小さな虫が、手の甲を這い登ってくる。

僕はそいつを潰して、服で拭った。


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