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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The Hint Of The Storm-2

夕方になると、同じ村で暮らす夕雷が、稽古をつけにくる。これも不可解なことの一つ。僕は彼のお兄さんを殺した。殺されるならまだしも、稽古をつけられるなんて、絶対おかしい。

村から少しだけはなれた森が、僕達の稽古場。

「いいか?あの枝だ。枝先5寸だけ切ってみろ。」

鎌をかまえて、狙う。

放った鎌は、しなやかな枝を揺らしただけで、切ることは出来なかった。

「ふん。ようやく解ったぜ…お前の鎌の癖って奴がよ…」

鋭い目を細めて、夕雷が言う。夕雷は、ぼくの肩に足をかけて、頭の上でひじを付いている。

「癖…?」

「お前の鎌は鉄砲玉とおんなじよ。ただぶち当たるだけだ。だが見てろ…」

そう言って、夕雷は鎌を放った。

枝は、切られたことに気づかないかの様に一瞬その場に留まってから、静かに地面に落ちた。

「凄い…。」

目を見張る僕に、夕雷が拳骨を落とす。

「凄かねえ!あれが出来て当たり前なんだ!ッたく…まあ、あのへんてこな刺青野郎に教わったんならそんなもんだろうがな。」

そう言って、地面に降りた。

「いいか、鎌鼬の鎌ってのはな、主人と魂を分けなきゃ物を斬らねえんだ。お前の鎌は、今のままじゃただの道具よ。」

「鎌は…道具じゃないんですか?」



頬筋に一陣の風が走った。避けた皮膚から、うっすらと血がにじみ出る。

「オレの兄貴の鎌を、二度と道具呼ばわりするんじゃねえ…!」

そして、振り向いて村のほうへ帰っていった。

「その鎌が道具なのは鎌のせいじゃねえ…おめえのせいよ…。」

そして、枝を切るまで戻ってくるなと言い残して居なくなった。

「雷になれ。それが俺たちのやり方だ。」



「はっ…はっ…」

腕がこわばる。何度投げたって結果は同じだ。枝どころか、葉っぱ一枚落ちやしない。

村からは夕飯の匂いが漂ってきた。前はご飯を食べないなんて普通のことだったけど、この村に来てからは…食べないと怒られる。そんなわけで、三食きちんと食べる習慣のついた僕の胃袋は、文句を言うようにぐうとなった。

とうとう僕は力尽きて、地面に寝転がった。

「はあ…。」

おばさんの作る味噌汁の匂いが目の前にあるような錯覚までおこしてしまう。


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