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透明な砂時計
【純愛 恋愛小説】

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透明な砂時計-1

好きです。
と、彼女は言った。霞む声で、しかし確実に。
それは僕だけに届く様に発せられた声であり、尚且つ僕だけに聞いて欲しかった言葉にちがいない。僕自身も、一番聞きたかった言葉だ。
そして僕の身体は、それを理解した瞬間様々な所で化学変化を起こす事になる。
例えば顔が熱くなってきた。
例えば目頭が熱くなってきた。
例えば鼓動が早くなってきた。
様々な所で、様々な反応を示しプラスの方向へと誘う。 それはとても心地よい物であるし素敵な物であった。バクバクと心臓が脈打ち、身体のあちこちが火照る。髪の毛の先から足の爪先までが自分じゃない様に高揚し、叫ぶ。

僕が僕で無くなるみたいに。
自身の色を失う様に。





『透明な砂時計』

好きな色は、と問われれば、いつも僕は少し迷って青と答えた。そして一握りの後悔が生まれて、やっぱり透明、と答えた。
好きな食べ物は、と聞かれれば、あれこれと言ってはみてみるものの、最終的にはコレと言った物が決まらなかった。

一言で説明すると僕はそういった人間である。
凡庸、普通、平均、ノーマル、などなど。 様々な形容の仕方があるにも関わらず、僕には自慢できる物は一つも無かった。 でも僕はその事で羨んだ事はあったにせよ悩んだ事は無かった。

最後に。
好きな人は、という質問対して。
僕が最初に浮かんだ人物は彼女自身だ。
それでも、僕は自分をコントロールした後に、今はいない、と答えた。
それが僕に出来る彼女への精一杯の誠意であったし、努力であった。
そんな事、今はもぅ関係が無いのだけれど。




始めて彼女に出会ったのは、高校最後の夏休みだ。
ついでに言えば、学校で。

僕はその日、受験勉強で躍起になっている周りの影響で休日学習教室に来ていた。
学習教室とは、夏休み期間に行う授業の様な物と思って頂ければいいと思う。参加は自由で、内容は主に二年間の復習。別名『落武者の集い』だ。
なぜそんな名前が付いたかと言うと、集まる生徒のほとんどが授業について行けずに脱落していく者ばかりであるから。

先に言っておくが、僕は勉強はそれなりにできる方だ。
できると言っても周りに比べれば、と言うだけであって(僕の周りは特別馬鹿ばかりであった)そこまで自信がある訳では無い。それでも、わざわざ夏休みに学校に出向いて勉強をしなければいけない程出来ない訳でも無かった。
つまり、何が言いたいのかと言うとつまらないのである。
僕にはこんな事をする必要も無いしやる気も無かった。
かと言って家でやる事があるのかと言えばそうでも無い。 部活をやっている訳でもないし、バイトをやっている訳でも無い。
強いて言うなら、暇つぶしなんだろうと思う。こんな空間に居る事は。
誓ってもいい。友人に頼まれなければ一生縁の無い所だ。


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