投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 15 「とある日の保健室」 17 「とある日の保健室」の最後へ

「とある日の保健室その5」-2

今私の手にあるのは、120円の缶ジュース。自販機で買ってきた。
(これにさっき恵理からもらった興奮剤を入れて、と)
プルトップを開けないで注射器で中に注入した。バレない為に、一応の事はやらなきゃ。
……よし、注入完了。あとは達也が来るのを待てば……
「よう。なにやってんだ?」
「きゃ……!」
「おい、落ち着け。俺だ」
びっくりした。
達也がもう来ていた。私を覗き込んでいる。
あわてて注射器を隠したけど、バレているだろう。じーっと、私の顔を達也が見ていた。
「なに隠してんだよ」
「なんでもない!」
「見せろよ」
「なんでもないってば!」
「……ま、いいけど」
胸を撫で下ろした。ようやく離れてくれたから。心臓が未だに高鳴っている。
さて、と。
「それより、はい、コレ!」
おもむろに私は缶ジュースを差し出す。興奮剤入りの。
「あ、ああ。悪いな」
「いいよ、別に」
缶ジュースを受け取った達也は、即座にプルトップに手を掛けた。プシュッ、と軽快な音をたてながらそれは開く。冷気が漏れでてくるのが見えた。
(そう。飲むのよ……)
達也は口に缶を運ぶ。
すべてはこれで上手くいく。全部、なにもかも。
「……?飲まないのか?」
もう1つの缶に気付いた達也は、私を見ながら言った。
いけない。凝視しすぎた。
「あ、あはは、飲むよ」
まずは私が飲まなきゃ。達也にバレちゃう。
軽く口をつけ、少しだけ飲んだ。炭酸が喉を刺激する。
「……ぷは」
ちょっと喉にきた……。炭酸はやめとけば良かったかな。
見れば達也も立ったまま飲んでいる。達也は炭酸は平気みたい。
「座れば?」
「ああ。そうだな。……隣り、失礼するよ」
誰かによって配置されたテーブルにイス。当然、イスは2つのみ。ここはカップル同士の憩いの場なのだから。それ以外の人間は要らない。
達也は2つ目のイスに腰を下ろした。
「ね、達也?」
「うん?」
そろそろ興奮剤が効いてくる頃合だ。ちょっとでも誘えば、すぐに襲うだろう。
「達、也……」
「どうした?」
あ、れ……?なんだか、おか、しい……。
動悸が激しい。
息が荒い。
顔から火が吹き出そう。
まさか、私……!
興奮剤入りの方を飲んじゃったの!?
「優花?調子でも悪いのか?」
「あ……ぁ……達……也ぁ……」
駄目だ……。もう、訳分かんない。
達也に触れたい。
どうしようもなく、身体全体が達也を求めている。
なら、達也に求めよう。
「好き!」
がばっと、私は達也に抱き付く。離さない。
「うわ!」
達也は軽く悲鳴をあげかけたけど、私は口を塞いでやった。
「……!」
「ん……む」
私の唇で。
「っ!んん!」
達也が私の肩を掴んで離そうとする。私は達也を離さない。
だけど、やっぱり男には敵わなかった。


「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 15 「とある日の保健室」 17 「とある日の保健室」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前