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ヒトナツ
【コメディ 恋愛小説】

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ヒトナツ@-4

電車の中では、女性は一言も喋らずに、じっと景色を見ている。
思い出そうとはしているらしい。
「……」
なかなか気まずい雰囲気だけど、俺はとりあえず気にしなかった。

でも、それでも、ひとつ気になることがある。

「あの…なんでアメリカからわざわざ?」
恐る恐る、聞いてみた。
「……ただ故郷が懐かしくなっただけよ。何度も引越しを繰り返したけど、一番記憶にあるのがそこだから」
「……」


やがて、車掌のアナウンスが俺の地元の駅を告げる。

「あ、じゃあ俺はここなんで……」
「ここよ!」
がばっと女性は立ち上がる。
「え?」
「あたしが前住んでいたトコ!」
「マジですか」
なんたる偶然。
「きみはラッキーボーイね!ありがとう」
女性は突如ご機嫌になり、意気揚々と電車を降りた。

「そうよ!ここだわ!すごい!思ったより変わってないのね」
「……ここは田舎中の田舎ですからね」
改札を出ても尚、女性は嬉しそうにはしゃいでいる。
駅の看板を笑顔で見つめている。
本当、さっきとは大違いだ。
「……あ、今日は雑誌の発売日だったな」
気付いた俺は女性に声をかける。
「ここからはわかりますか?」
「ええ、たしか幼馴染みの家が近くにあったと思うわ。なんとなく覚えてるから大丈夫」
「そうですか、気をつけてくださいね」
「ありがとうボク、じゃあまた、いつかどこかで」
女性は笑顔で、ゆっくり立ち去る俺に手を振った。
俺は頭を軽く下げて、駅前の本屋へと向かった。


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