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ヒトナツ
【コメディ 恋愛小説】

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ヒトナツ@-5

「……ふんふふふーん」
人助けをして気分がいい俺は、目的の雑誌を購入して、鼻歌混じりに店を出た。

なんの雑誌かって?

ヘアスタイルとファッションの雑誌。
決して怪しい本じゃあない。

桜さんにふさわしい男になるよう、俺は日夜、努力しているのです。

駅から徒歩五分、なかなか立地条件がよい。
住宅街に入るとすぐに、ごく普通の我が家が見えてきた。
「ただいまー」
普段は返事なんて返ってこない我が家だが、なぜかドタドタと奥から物音が近付いてきた。
「健吾!!」
「……なんだよ」
予想通り、母親だった。
なんか無駄に息が荒い。
「あの……あのね……」
どうしたババア、親父が事故にでもあったか?
「なんだよ、暑いんだから早くしてくれ」
すると母親は一呼吸の後、堰を切ったかのように早口で言った。
「……な、渚ちゃんが!渚ちゃんが帰ってきたのよ!」
「……は?」
そういえば、玄関には見慣れないスニーカーが。
その、ひどく使い古した感じの。


それにしても、渚か。
すごく懐かしい名前だ。

俺の家の裏で祖母と暮らしていたおてんば女。
やたら元気で気が強くて、おとなしかった俺は毎日のように子分にさせられてたな。
たしか、小学生のときにおばあさんが亡くなって、両親のいるアメリカへ引っ越したんだっけ。

あのときは俺も泣いたなあ。
何だかんだ言っても楽しかったし、初恋の相手みたいなもんだったし。

そうか、“アイツ”帰ってきたんだ。

「奥にいるわよ!もうすっごく綺麗になっちゃって!」
「……ふーん」
ババアの言うことなんて大抵は大袈裟だからな。
ゆっくり靴を脱いで家に上がり、まっすぐに居間を目指す。

やべ、なんかドキドキしてきた。

この扉を開ければ、渚が。

「っ!」

気合いを入れて開けると、まず目の前に入ってきたもの。

なんだか見覚えのある、巨大なリュック。

「……」
その横にはさっきの女性が座っている。視線は俺を指している。
「……どうも」
「あれ、なんでボクがここにいるのかしら」
怪しげに俺を睨む。

なるほど、意外と冷静な俺は、すぐに状況を把握した。

と同時に、頭の中に公式を浮かべる。


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