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カーテンと机とつぶれた気持ち
【青春 恋愛小説】

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0センチ。-2

昨日は寝れなかった。忘れなきゃ忘れなきゃなんて思ってること自体、彼女のことを考えてることになる。

優衣と待ち合わせしてる時間までまだ少しあるが、いつも待たせてるから早めに駅へ行った。
山田さんのことで後ろめたさがあったから今日は優衣の好きなところに全部付き合ってあげよう。それで少しは許してくれるかな‥。


時間どおり来た優衣は俺が先に来ていたことに驚いていた。

今、考えればそのときから様子がおかしかった。目は少し腫れていたし、空元気だった。
でも俺はやはり頭の中は彼女でいっぱいで気付いてやれなかった。

優衣の痛みも悲しみも‥。

午前中は映画を観た。
最近流行の恋愛映画で内容はほとんど頭に入らず、隣で泣いてる優衣しか覚えていない。
ただ劇中で印象的な台詞があった。


“あなたが傍にいてくれるのなら全てを捨てても構わない”

どこかで聞いたことのあるような気がした。
でも思い出せなかった。

昼ご飯も食べてどこへ行こうかと歩いていたときだった。


人込みの中を颯爽と歩く彼女がいた。
美しい髪を揺らし、細い腕に荷物を持ちながら‥‥。


突然のことに足を止め、人込みに消える彼女を見ていた。

一瞬、追い掛けそうになった。

『奏人?』

優衣の声で我に返り、また歩き始めた。



『奏人、早く行きなよ。』

突然、優衣が足を止めて言う。俺の顔は見ないで下を向きながら‥‥

『あたし奏人の彼女なんだよ?だから奏人のことならなんでもわかるんだよ。好きな本も好きな音楽も好きな‥‥‥人も。だから早く追い掛けないと行っちゃうよ?』

優衣がなんのことを言ってるのかすぐには解らなかった。

「‥‥優衣‥?」

『好きなんでしょ!??あの人のこと!!もう別れてあげるから、さっさと追い掛けなよ!!』

今日初めて優衣と目を合わせた気がした。
目に涙をいっぱいためて、しゃくり上げていた。

俺は震える小さな肩を抱き寄せた。優衣は驚いて俺を見上げ、また泣き始めた。


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