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僕とお姉様
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僕とお姉様〜僕の失敗とお姉様の決心〜-2

「じゃ、学校行くね」
「山田!!」
「…何?」
「昨日の事…なんだけど、あたし酔っ払ってて、その、山田にした…」

歯切れの悪い言葉達。それが嫌だったのかすぐに言い直された。

「あのっ、ごめんね!!あんな事して、でもあたし―…」
「事故でしょ」
「…え?」

事故

それが僕の考えついたセリフだった。

「酔ってたし、謝る必要ないよ。気にしてないし。だから忘れて」
「山田…」
「僕も、忘れるし」

嘘。
強烈なインパクトは勿論だけど、好きな人としたキスを忘れられるわけないじゃないか。

「…ごめん、山田」
「謝らなくていいって」
「でも…」
「反省してるんなら禁酒でもしたら?僕にするならともかく、知らんおっさんとかにしたらシャレにならんし」
「………そだね」
「そうだよ。んじゃ、行ってきます」

気にしていない事を強調するようにお姉様に笑顔を向けた。
これが最善の策。
僕がしてあげられる最高の心遣いだ。
お姉様の為にしたのだから、当然喜んでくれていると思いこんでいた。
それが大きな勘違いだなんて考えもしなかった。

その日学校から帰宅した時にはお姉様は既にバイトに出ていていなくて、翌朝は寝てたから顔を合わせず。
残念だけどそんなのはよくある事。
でもそんな状態が3日も続くと、一緒に暮らしてるにも関わらずたまらなく会いたくなった。
もしかしたらキスのことを気にしてるのかな。
だから僕と会わないように時間をずらしてるとか?
それって、避けられてるんじゃ…
不吉な予感を一掃すべく頭を大きく振った。
今日は帰って来るのを待とう。もうすぐ自動車免許の試験だし、勉強してたって言えば起きてても不自然じゃない。
そうと決まると早速問題集を取り出して、すっかりお姉様の私物でいっぱいになった勉強机の前に久しぶりに座った。

「…あれ?」

その目線になって初めて、机の脇に置いてあるゴミ箱にプリクラが丸めて捨てられてるのに気がついた。例の女子高生のコスプレのやつだ。
すぐに拾って折り目のついた部分を丁寧に伸ばしていく。調度お姉様の目の辺りが歪んでいて、せっかくの笑顔を悲しそうに見せていたからだ。
あんなにはしゃいで見せてくれたのに何で捨てるんだ?
そんな疑問を抱きつつ、その中のワンショットをハサミで切り取って机の隅に貼った。
あと何時間かしたら会える。確実に会話ができるんだ。そう思うだけで眠気なんて吹き飛んでしまう。
でも実際帰って来たお姉様の笑顔はどこかぎこちなかった。

「起きてたの?」

ただいまでもなく、困ったように言う。

「自動車学校の学科の勉強してた」
「へぇ、偉いね…あっ」

机の上に置いておいたプリクラを見つけるが早いか、ひったくるようにそれを掴んだ。

「捨ててあったから拾っ―」
「何で拾うの!?」
「だって、せっかく可愛く撮れてるのに」
「可愛くないよ!」
「自分が可愛いって言わせたくせに」
「こんなの可愛いわけないでしょ!?いい年してバカみたいなだけじゃん!!」
「…」

プリクラを握り潰す拳にポツポツと雫が落ちた。
びっくりした。
何の前触れもなく、本当に突然泣き出したから。


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