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School days
【学園物 官能小説】

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School days 4.6-1

「あ、おはよう柿沢くん」
「もう風邪平気なの?」
「ああ、心配ありがとう」
玄関で出会ったクラスメートを軽くかわし、教室へ向かう。やっぱり人に気を使うのは疲れる。
梨衣と居るのがどれだけ楽か身に染みて分かった。

教室を前にちょっと深呼吸。こうして気を引き締めないとやってられない。

ガラッ

扉を開く。普段と変わらない教室。おはようと笑いかけてくるクラスメートら。
造り笑いを浮かべる俺。我ながらよくやると思う。

「後ろつかえてる」

扉で立ち止まっていた俺の背で声がした。
凛とした声。この声、結構好きだ。
振り返る。涼しい瞳が俺を見上げていた。この瞳も以前に比べたら随分優しさを帯びたと思う。
「無理しないでよ?」
俺が作った隙間を擦り抜けながら梨衣が言った。表情が優しい。無性に抱きしめたい思いに狩られる。
「り…」
「梨衣、おはようっ」
俺の言葉を遮って別の奴が梨衣を呼んだ。…三科?
「あ、おはよう羽揺」
驚いた。梨衣が笑って三科に答えてる…。
さら、と梨衣の髪が流れ、遠ざかっていく彼女。
俺だって梨衣の笑顔なんて数える程しか見たことがないというのに…。
なんだか胸がすっきりしないまま俺は席についた。
昨日の「頑張る」ってこのことだったのか…―

机に伏せながら、俺は三科と話す梨衣を見ていた。茶の髪が光を弾いてキラキラ光っている。
ああいう梨衣は初めて見た。俺と体を重ねているのは本当に彼女なのかと思ってしまう。
そう、まるで別人。俺の知らない梨衣…


昼休み。5時間目は体育なので誰も教室にいない。おとついまでなら、こんな時は梨衣がいた。
二人で何気ない会話を交わして、外を眺めて。でも今は…
俺は窓の下に目を落とした。俺のクラスの男女が数人、円になってバレーをしている。その中には梨衣もいた。長い髪を一つに束ね、うまくトスを送っている。
「梨衣うまいねー」
そんな三科の声がした。梨衣は肩をすくめて笑う。
当たり前だ。梨衣は中学1・2年と、バレーのスポーツクラブに入ってたんだぜ。知らないだろ。

言ってしまいたい。

梨衣と関係を持っていることも全て…
世界中の奴らに知らせてやりたい。
梨衣は俺の…
俺の…

……何だ?

急に焦りが生まれた。梨衣は俺の何なんだ?俺は梨衣の何なんだ?
セックスフレンドってやつか?いや、違う。違う、そんなの嫌だ。

嫌だ、だと?

何故?
どうして嫌なんだ?

分からない…
自分が分からねーよ…


俺は窓から目を逸らし、自分の席へと座った。頭の中をぐるぐると疑問が駆け巡る。そのせいで、俺は近付いて来た足音に気付かなかった。

「名継?」
澄んだ声に全身が震える。上げた視界に飛び込んでくる梨衣。
「早くしないと次の体育、遅れるよ」
どうやらタオルを持って行くのを忘れたらしく、彼女は鞄からそれを取り出しながら俺に言った。
「バレーしてたのか」
彼女の言葉には触れず、俺は返す。
「うん。久しぶりだとやっぱ鈍ってるよ」
肩をすくめる彼女。開け放したままだった窓から入ってきた風が、梨衣のポニーテールを揺らした。
ふわりと流れるレモンの香り。梨衣の髪の匂いだ。
SEXの時もいつも俺を包む、あの香りだ…

「梨衣…」

居ても立ってもいられなくなり、引き寄せ、口づける。それに応えてくれる彼女。

俺の梨衣…
俺だけの梨衣…
もっと、もっと傍に
1番、俺の傍に…

す、と梨衣が身を引いた。離れた唇を再び捕らえようとすると梨衣の指が俺の唇に当てられた。
「どうしたの、名継?」

ああ、梨衣…
名前で呼んでくれるのか?

言い知れぬ幸せに襲われる。今までずっとSEXの時だけしか呼んでくれなかったのに…

「名継」。

そう呼ばれる時だけ、俺は「俺」になれる。社長息子というレッテルから、優等生という立場から逃れられる。
だから俺は梨衣に約束させたんだ、SEXの時だけは名前で呼ぶようにと。

ただ、「俺」の居場所を作りたかった。
休める場所が欲しかった。

でも、梨衣の傍は居心地が良すぎた。いつの間にかそこから離れられなくなってた。
梨衣、「俺」を癒して…
梨衣、「俺」を受け入れて…
梨衣…

「名継?」
再び梨衣が俺を呼んだ。
「午後6時、教室な…」
梨衣に軽く口づけを贈ってから、俺は告げた。


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