制服の下の真実-1
[好きになってはいけない」
毎日毎日、自分にそう言い聞かせる。そうしないと自分で自分が抑えられなくなる。
橘 美月(たちばな みづき)
俺の生徒・・・。
四月から新任の俺。
片岡 玲雄(かたおか れお) 23歳。
いきなり担任を持たされた俺は、毎日忙しない日々が続いていた。
受け持ったのは、2年生。文系だ。私立の進学校で、お金持ちのお坊ちゃんお嬢ちゃんばかり。まるで、最近流行った漫画そのものだ。きっと、お小遣いは俺の給料なんかより多いんだろうな・・・
橘・・・
そう、橘 美月も例外でなく父親は代々続く会社社長だ。
ケバケバしい女性徒ばかりの中で、橘は違っていた。黒髪をひとつに縛り、化粧っ気もない。もちろんスカートも短くない。
化粧をしていないが、透けるような肌に淡く色づく頬。大きな瞳には、色濃く縁取る長い睫。唇はまるで春の桜が咲き誇っているような美しい形と色。
一目ぼれだった・・。
今日も残業だった。疲れた体を引きずるようにして家路につく。
駅に向かう途中、視界の中に違和感を覚えた。
橘 美月だ・・・
声を掛けようと近づいた。
ただ驚いた・・・
橘は、男とホテルから出て来たばかりだったのだ。しかも、50くらいのおやじとだ。
俺は、頭が真っ白になった。真っ白だったが、足が動いていた。
「橘!!!」
一瞬体をビクつかせたが、ゆっくりと振り返った。
「みづきちゃん。誰なの?」
汚らしいおやじが橘に聞いた。
「・・・担任。」
そう呟くとおやじは慌てて
「じょっ冗談きついなぁ。ははっ。」
と苦笑いを浮かべて逃げるように去っていった。
「お前なにやってるんだよ!」
「何って?」
「あのおやじ誰なんだよ?」
「あの人は・・・田中さんです。」
「はぁ?田中さんか何だか知らないけど、何でお前とここから出てきてるんだ?って聞いてるんだよ!!」
「・・・・。」
「なぁ、橘。どうかしたのかよ?」
「先生。今財布の中にいくらありますか?」
「えっ?いっ今?二万あるかないかくらいだけど・・・って、一体なんだよ?」
橘は、俺の腕をぐいっと引っ張ってホテルの中に連れ込んだ。
手馴れた感じで受付を済ませエレベーターに俺を押し込んだ。
エレベーターが四階につくと何も言わず腕を引っ張って部屋に入っていった。
きっと、止めることは出来ただろう。でも、出来なかった・・・。