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秘書の恋
【OL/お姉さん 官能小説】

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秘書の秘め事-1

「あたし、彼氏できました!」
松本梨絵(まつもとりえ)の前に立ち、嬉しそうに黒田美香(くろだみか)は言った。
「よかった…」
松本はほほえんでそう言う。
「梨絵さんのおかげです!」
「あたしは何もしてないわ。でもほんとよかった…」
「ありがとうございます」
黒田はぺこっと頭を下げて自分のデスクへと戻っていった。
「…何の話ですか?」
真鍋隆(まなべたかし)が松本に不満そうな顔をして聞く。
「真鍋には内緒っ」
人差し指を自分の唇にあて、真鍋にウィンク。
さすがに真鍋には言えないなぁ、なんて思いながら松本は笑った。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

それは数ヶ月前の話。
黒田美香25歳。
今年誕生日が来たら、26歳になる。
「もー…何でかなぁ」
グラスを片手に持ち、さっきからずっとそうつぶやいてる。
「…飲み過ぎ」
あたしが振り向くとそこにいたのは梨絵さんだった。
「梨絵さん…」
あたしにとって梨絵さんは憧れの存在。
というか、会社の中で彼女を何とも思わない人はいないんじゃないか、というくらい綺麗な人だとあたしは思っていた。
「どうしたの?」
梨絵さんはあたしの横に座る。
「…何でもないですっ」
グラスの中身を一気に飲み干し、あたしはまた呟く。
「何でかな…」
梨絵さんが少し間を置いて
「男にフラれた?」
そう聞くから、グラスを持つ手が震えた。
付き合ってた…
大学を卒業してからずっと。
だけど、だけど。
『俺、結婚するから』
そう言い残して、あたしから去っていった。
他の人と付き合ってたのも知らなくて。
あたしはいったいなんだったんだろう。
彼に都合のいい存在でしかなかったことが悔しくて。
「飲み過ぎはよくないと思うけど」
「…大丈夫ですっ…同じの…下さいっ」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

目を覚ますと、あたしは自分の部屋にいた。
下着姿で、着ていた服は丁寧に畳んでベッドの隅に置いてある。
「今3時よ。全く…飲み過ぎはよくないって言ったでしょ?」
起き上がって、その声の方向に目をやると梨絵さんが立っていた。
「黒田のせいであたしは一滴も飲めなかったのよ?」
「え…と」
あたし梨絵さんに飲み過ぎって言われてやめようとしなくて…
「ここまで…運んでくれたんですか?」
「あたし一滴も飲んでなかったから会社に置いてた車までね。
とりあえず歩いてくれたし、家の場所も教えてくれたから助かったけど。
どーせ記憶ないんでしょ?」
「はい…全く…」
と…年上にそこまでさせたあたしって…
「まあ、一度お酒で失敗はしといた方がいいかもね」
梨絵さんはクスっと笑うとベッドに座った。
「お酒飲み過ぎてあたしがここまで運んだことは誰にも言わないから安心して。
男にフラれたくらいで、こんなに飲むことないわよ」
梨絵さんはあたしの頭を撫でながらそう言ってくれた。
こんなに迷惑かけたのに…
きっとずっと起きててくれたのに。


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