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伝えたい気持ち
【学園物 官能小説】

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伝えたい気持ち-5

猫は無事飼い主の元に帰り、これで解決…のはずだった。
でもコンクールの前日、校庭に猫のバラバラ死骸が放置されるという悲惨な問題が起きた。
俺が見つけた猫じゃなかった。
でも、俺が犯人になったんだ。
「帰り道に山内竜くんが猫を抱いて帰っていたのを見ました」とかいう何人かの生徒の目撃証言だけがもとで、俺は猫をバラバラに殺すとかいう、最低な人間にでっち上げされた。
もともとチャラチャラしてたから、誰も俺を信じてはくれなかったけど。

コンクールは普通に行われて、俺は最優秀をもらうはずだった。
でも、取り消しになった。
その時俺がコンクールに出した絵、それは―――――
題が「海」。
コバルトブルーの色彩表現が絶大評価を得た。
そして、俺の代わりに最優秀を獲得したのは―――――
俺の隣で出品されていた「ひまわり」。
ユウが持ってきた、このひまわりだった。
そのひまわりを書いたやつの名前、俺は知ってる。

―――――狭山 茜―――――

サヤマ アカネ。
『夕焼け色の別な言い方って何て言うと思う?』そう言ったユウの言葉が思い出される。
アカネ色。
ユウは、狭山茜だったんだ。
更に偶然な悲劇は重なる。
俺がコンクール三日前に猫を届けた飼い主こそ、狭山茜だった。
なのに俺は、猫を殺した犯人になりコンクールの賞も剥奪、狭山茜は猫が無事見つかりコンクールでは最優秀―――――


狭山茜は、悪くない。
俺は分かってるはずで、今でも狭山茜のせいじゃないと思ってる。
でも当時の俺には、狭山茜のせいにして、ひねくれるしかなかった。
この直後から、俺は美術の第一線から身を引いた。


俺は、ユウからもらったキャンバスの裏を見た。
『A.SAYAMA』
間違いなかった。
高校で、遊びで美術を選択科目にしてたけど、そん中に狭山茜がいたのか…。
なんかの拍子で、俺のテキストが狭山茜の手に渡って、その時メモを挿んだとか?
待てよ、狭山茜だろうが、俺にとってはユウがそこにいたわけで。
でもあんな黒髪の超ロングなんていねーよな。
そこまで考えた時、黒縁眼鏡のまとめ髪をした女を思い出した。
そいつは美術の時間、必ず俺の左隣に座っていた。
そうか、ユウ。
俺の隣にずっといたんじゃん。
髪をまとめて、ずっと一緒に美術うけてたんじゃねーかよ。
ユウが狭山茜だろうと、俺はもう関係ねーよ。
狭山茜を恨むのは、お門違いなことくらい、わかってますって。

俺はさっさと服を着替えて、狭山茜の家に向かった。
ユウは茜なんだろ?
なら、猫届けた家に行きゃユウがいるんだろ。
ユウなんだか、茜なんだか、まぁ人間は一人だけどさ。
俺の気持ちは晴れていた。
茜に対する後ろめたい気持ちも、ユウに対する愛情も、俺は全部ひっくるめてプラスにしていける自信がある。
あーもう今のうちに、クサレ女どものケー番消しとくか。
俺はユウの、いや、茜の家に向かいながら、ヤリ友女どもの携帯番号を一つ一つ消していった。
もうすぐだ、あの角曲がってすぐ、門構えしてる立派な家。
電話しないで来たらびびるだろーよ。
初めまして、山内竜です、とか言ったらやばいやつかよ俺。
そんなこんなを考えながら、俺は角を曲がった――――――――――


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